グローバルメーカーSCM部門の動き方(1)

2021.5.11 / SCM

※この連載は月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)5月号に掲載された内容をコラム用にリライトしたものです

1.コロナ禍におけるサプライチェーン混乱

ご存じの通りコロナ禍は、グローバルサプライチェーンに大きな混乱をもたらした。国境の閉鎖や工場の稼働停止で製品や部品の供給が著しく滞った。在庫過多・ディスカウント販売が定常化していたアパレル業界においては老舗企業がいくつか消えることにもなった。

そうした混乱に、製造業各社はどのように対応したのか、またそれは企業内のどのような組織が対応したのか。まずは振り返ってみよう。

コロナ禍で、日本の製造業の中で最も話題になったのは、生産拠点の国内回帰、生産拠点の多元化である。政府は国内回帰へ2200億円、生産拠点多元化向けに235億円の補助金支給策を決めた。 [1] [2]

しかしながら、国内回帰を検討はしたものの、実際に具体的な行動に移した企業はごくわずかのようだ。JETROとフィリピン日本人商工会議所(JCCIPI)が実施したアンケート(20年6月8~11日実施、回答数226社、以下、フィリピン調査)によると、業績悪化(売り上げ減少)への対応・対策として「他国への生産移管や日本国内回帰などのサプライチェーンの再編」を選択した企業は、製造業で9.5%にとどまった。 [3]

野村総合研究所が20年5月に実施した別のアンケート調査 [4]では、約半数の企業がコロナ禍で調達量や生産量の調整を実施したと答えている。(図1)

そして、これらの対策を講じた組織については、約半数が「製造から販売までのサプライチェーンを一元的に管理する部門(SCM部門)」と答えているのに対し、約35%は現場での対応と答えている(図2)。

そもそもSCM部門がないと答えている企業が製造業で36.7%も存在する。SCM部門があると答えた企業で、SCM部門が対応しなかったケースでは、その理由として「普段から、SCM部門は、需給料の調整や調達先変更といった運用面で機能していないから」というコメントがあるのも、気になるところである。

従前からSCMの活動に取り組んでおり実績と計画をデータとして管理している弊社の顧客企業の多くは、コロナ禍への対応策として、拠点のある各国現場の販売情報と在庫、供給予定を即座に分析して、生産在庫の調整を迅速に行っている [5]。異常時であっても、素早い意思決定には事実としてのデータが欠かせないのである。

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[1] METI, “「海外サプライチェーン多元化等支援事業」の公募について,” 26 5 2020. [オンライン]. Available: https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo/2020/k200526001.html

[2] METI, “「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」の公募について,” 22 5 2020. [オンライン]. Available: https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo/2020/k200522001.html.

[3] JETRO, “地域・分析レポート サプライチェーン寸断・停滞の影響を再認識、リスク分散・低減に向け対応へ,” 6 11 2020. [オンライン]. Available: https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2020/0901/d4fb00237115fc57.html.

[4] NRI, “新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業のサプライチェーン上の対応状況と課題,” 12 6 2020. [オンライン]. Available: https://www.nri.com/jp/keyword/proposal/20200612.

[5] sbbit, “ビジネス+IT ブラザー会長 小池利和流の危機管理術、「データ」で新型コロナをどう乗り越えるのか,” 25 11 2020. [オンライン]. Available: https://www.sbbit.jp/article/cont1/46216.