グローバルメーカーSCM部門の動き方(2)

2021.5.11 / SCM

2.韓国系メーカーのSCM

同じ時期の韓国企業の動きについて、まずザイオネックスの韓国本社からの報告を紹介する。

韓国企業の動きは非常に速かった。欧州各国でロックダウンが始まり、日本でも緊急事態宣言が出た約2か月後から、韓国本社には、次々と韓国大手の製造業から依頼が入り始めた。新規顧客だけでなく、既存顧客でそれまでは供給側の計画に熱心だった企業が、リモートワークになったことをきっかけに、Webを利用した営業会議を実施するための需要計画や分析基盤を求めてきたというケースもあった。

物理的に集まって行っていた営業会議では、販売需要と在庫リスク、機会損失リスクなどを、国内外の販売拠点から営業担当者が互いに持ち寄った資料を基に議論していた。売れ筋の製品の拠点配分などは「声の大きいほうの意見が通る」ということもあった。

しかし、コロナ禍におけるリモート会議の議論では、統合された資料を画面上で一度に確認する必要があった。そもそも需給が日々目まぐるしく変化する状況では、各自が個別に集計して作成した資料はすぐに陳腐化してしまう。誰もが最新の同じデータを、その場で分析して・Web上で共有できる仕組みが要る。

かくして、韓国本社には韓国の大手製造業からT3(ティーキューブ)需要計画モジュールの導入依頼が相次いだ。コロナ禍によるプロジェクト数の落ち込みを心配していた弊社にとっては、予想外の動きであった。

 

図3.「T³」の販売計画の策定画面
過去の販売実績や与えられた販売予算をグラフで参照しながら将来の計画を策定する
権限と役割に応じて、拠点ごとまたはグローバルの集計値を、為替を考慮した金額で確認できる

もともと韓国企業は驚くほど意思決定が速い。需要計画のシステムを導入する場面でも、弊社のパッケージをセットアップして試しながら、3か月から半年で本稼働にこぎつけてしまう。実現したいことが明確なので、長い期間にわたり社内で検討したり協議したりすることはない。

とりわけ今回は、欧州や中国からの物流が途絶えてしまったので、海外向けの需要に対して国内生産を増やして補う必要があり、素早い対応が求められた。コロナ禍であっても世界市場で伸びた半導体やリチウムイオン電池需要に応えるため、大幅に生産量を増やしたという。

韓国の代表的系列会社のうち、SKハイニックス、サムスン電子、LG化学、ハンファなどのメーカーでは、2020年の営業利益が前年に比べて増加している [6]。需要を読み、素早く供給体制を整える。そのためには武器となるシステムも迅速に装備する―日本企業にはやや乱暴にも見えるような積極性が韓国メーカーの強みである。

以上は、日本とお隣韓国の例を取り上げた比較に過ぎないが、そこで気が付くのは、変化に対応するアプローチの違いである。コロナ禍のような予想しなかった危機に直面しても、日本の企業は総じて状況を静観し長期的な視点で対策を検討する。変化への対応を決める前に、変化が将来どのように推移するかを見極めようとする傾向がある。一方、韓国企業は、もちろん日本と同様に長期的な検討は行うものの、変化に手をこまねいているのを嫌う。目の前の事象に対してさまざまな手段を使って即座に対応しようとする。必ずしもどちらが正しいとは言えないが、変化の周期が早くなっている昨今、長期的な視野に立った検討をしつつも、早い意思決定を下すことは日本企業にとっても重要であろう。

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[6] 中央日報, “韓国10大グループも半導体・化学のみ好調…車・造船・鉄鋼は不振,” 22 02 2021. [オンライン]. Available: https://s.japanese.joins.com/JArticle/275807?sectcode=300&servcode=300.