グローバルメーカーSCM部門の動き方(3-2)

2021.5.11 / SCM

3-2.意思決定とガバナンス

可視化の仕組みがあり、SCM部門が常に状況をモニタリングしていたとしても、素早い意思決定と統制力がなければ環境の変化にうまく対応することはできない。それは日本企業に一番欠けているところかもしれない。

そもそも日本企業のSCM部門は各部門に対してアドバイザーとしての権限しか持たない場合が多い。可視化の仕組みはSCM部門が準備するが、判断や意思決定の権限はグローバルの販売統括拠点や生産拠点が握っているというケースもよくある。

 

その結果として、各拠点が個別のルールや判断基準でオペレーションを行うことになる。ERPや計画システムが日本本社を中心としたASEAN、欧州、米州でそれぞれバラバラに構築されていることすらある。

再び韓国系メーカーを例にとると、SCMシステム構築プロジェクトの完了時には、必ずCEO向け報告の場が設けられる。(そのため弊社にはプロジェクトごとの完了報告資料が必ず存在する)

報告会の席では経営トップからの厳しい質問が飛ぶ。何が課題であり、それを解決するために業務プロセスをどのように変えたのか。その仕組みはどのようなものになったのか。投資に対してどれだけの効果が期待できるのか。何を聞かれても返答できるよう準備をしておかなくてはならない。

有名な話だがサムスンのCEOは、日頃からSCMシステムを通して、各国の拠点から上がってくる情報を把握している。生産拠点であれば、どれくらいの半製品と完成品を生産しているか。生産能力にどれくらいの余裕があるのか。販社であれば、販売目標をどこまで達成しており、この後どこまで伸ばせるのか。どれだけの量の製品がどのタイミングで必要なのか。さらには計画を実現するための十分なリソースがあるかなどウォッチしているのである。

このような仕組みの運用を任せられているのがSCM部門である。そのためグローバルの需給調整会議や戦略会議において、SCM部門はリーダーシップを発揮することを求められる。

そうした会議に使われるのは、時間をかけて作成されたプレゼンテーション資料でなく、情報が操作されていない“生”のシステム画面である。CEOも、中間マネジメントも、拠点の責任者もすべてがこの「同じ」情報をもとに議論をすることで、その場での判断が可能になる。

日本企業もまた、確度の高い情報に基づいて、トップマネジメント層が自ら考えて判断するスタイルに変わっていく必要があるだろう。SCM部門も管制官として必要に応じて指示を出す。現場がその指示に従ってオペレーションすることを義務付けるよう、トップマネジメントのバックアップしなければならない。

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