グローバルメーカーSCM部門の動き方(3-3)

2021.5.11 / SCM

3-3.意思疎通を図る・調整する

一般にSCM部門の最大の役割と考えられているのは、「需給調整部」と呼ばれることもある通り、各部門との調整である。SCMシステムを運用している企業であっても、販売計画に対して在庫がだぶついている場合には、調達部門に対して発注数の調整を依頼しなければならない。あるいは急激な需要の増加やデータ化されてないキャンペーン情報を鑑みて、販売計画の上乗せをすることもあるだろう。また、生産能力が間に合わない場合には、海外販社や生産拠点に対して配分を交渉しなければならない。

そのため拠点がグローバルに広がっている企業のSCM部門は、調整能力、コミュニケーション能力に長けている必要がある。ただし、属人的な能力に頼ってばかりはいられない。ましてや文化の違いや言葉の壁がある海外との意思疎通は語学能力だけの問題ではない。調整には論理的な裏付けが必要である。

 

 

それを保証してくれるのが、SCMのプロフェッショナルとしての国際資格である。2019年に旧・米国生産在庫管理協会(APICS)とSupply Chain Councilが統合して発足した「ASCM(Association of Supply Chain Management」 [8]により教育プログラムが提供され、資格認定が行われている。 [9]

SCMの管理領域によりいくつかの資格が存在するが、その教育課程においては、グローバルスタンダードとしての標準プロセスと共通用語を覚えることになる。本社が海外拠点とのコミュニケーションを円滑にするには、SCMの概念や定義が共通でなければならない。そのため米国のみならず欧州やアジア各国のグローバル企業ではSCM担当者に同資格の取得を義務付ける企業もあるようで、既に世界10万人以上が取得しているという。

2019年に筆者はASCMの国際会議に参加する機会を得た。世界中のSCMに関連するマネジメントや担当者が一堂に会して、自分たちの活動について紹介し活発な議論が交わされていた。英語圏だけでなくインド、中国、韓国、シンガポールなどアジアの国々からの参加者も多かった。

日本では日本生産性本部(*1)がASCMの資格取得のサポートを行っている。しかし、製造先進国の中では認知度は低く、取得者の数も圧倒的に少ない。SCMの領域でもガラパゴスが進んでいるように感じる。

グローバルスタンダードに則って構築されたSCPシステムを利用することで、社内外との意思疎通を強制的に標準化していくことも、日本企業には一つのアプローチとして必要かもしれない。

 

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(*1) ロジスティクスビジネスに掲載した「日本能率協会」は誤りです。お詫びして訂正いたします。

[8] ASCM, “Association Supply Chain Management,” [オンライン]. Available: https://www.ascm.org/.

[9] ASCM, “ASCM,” [オンライン]. Available: https://www.ascm.org/.

関連リンク

日本生産性本部 APCS: http://apics.jp/