2023.11.13

【講演レポート】SCMガラパゴスの日本。今が遅れを取り返す最適な時期〜可視化とシナリオによるレジリエンとなサプライチェーン構築

本日はサプライチェーン改革をテーマとして、今年9月にSCM(サプライチェーンマネジメント)の国際会議「ASCM CONNECT 2023」に参加した際の報告や感想とともに、これから各社が取り組むべき施策についてお話しいたします。

先に少し弊社について紹介いたしますと、弊社は米国MITの博士課程を終了した3名の博士で設立した会社です。23年にわたりサプライチェーンのソリューションとコンサルティングを提供しており、ソリューションとしましては、大企業向けにカスタマイズができるSCMサービス「T3SmartSCM」と、中堅企業向けにカスタマイズが不要なSaaSのSCMサービスとして「PlanNEL」を提供しております。

さて、本日のお話ですが、4つのパートに分けてお話をさせていただきます。

1. 日本経済の失速
2. SCMには世界標準がある
3. 常態化したサプライチェーンの混乱に備える
4. 人を活かすデジタル化

1.日本経済の失速

冒頭からの日本経済の失速という、少々厳しい内容を取り上げますが、本セミナーをお聞きの皆様も、この数十年の間に日本の経済的なポジションが落ちてきていると感じていらっしゃると思います。実際に内閣府の出している2022年の資料からも実際の経済活動の増減を表す実質GDPの伸びが、先進国の中で最下位ということになっています。

さらに、労働生産性についても、従業員1人当たりの生産量を労働者数で割った数値が、先進国の中では最も低い順位となってしまっています。特に2018年からの順位の低下には驚きますが、お隣の韓国との比較で2018年を境に逆転されています。これは韓国で2018年に労働衛法の改正によって、労働時間が減少したことも影響しているのかもしれません。

こういった数字と、9月の国際会議「ASCM CONNECT 2023」に参加して、アメリカや欧州の関係者との対話を通して、以前から仮説として考えていた、ITプロジェクトの生産性について確信が深まりました。

弊社の親会社は韓国のソウルにあるんですが、韓国の大手企業に対して常時並行して約30のサプライチェーンシステムのプロジェクトを進行しています。どのプロジェクトも開始から実際にお客様に利用できる状態になるまでに、短ければ6ヶ月、長い場合でも1年と聞いています。対照的に、弊社の関わるプロジェクトに限らず、日本では短くても1年、長ければ3年から4年が普通とされています。

ITプロジェクトに関しては、期間に関する国際比較というのはデータがなく、一概には言えませんが、日本でプロジェクトの期間が長くなっている理由は、かつて「ものづくり」の強みであった「摺合せ力」や「国際競争力」の低下が考えられます。プロジェクトの初期段階での構想や業務設計と製造が分業化され、特にソフトウェア開発では下請けの多重構造や、コロナ禍によるオンライン化がコミュニケーションの障壁となり、プロジェクトの期間が延びているのではないかと考えています。

もう一つの可能性として、企業が自社で検討すべき意思決定の部分を、コンサルタントなどの外部有識者に依存することで、逆に検討時間が長引いてしまっていることがあります。

さらに、日本は強力なリーダーシップが不在とされることが、多く見受けられます。日本人の失敗を恐れる企業文化や、真面目で完璧を追求する性格が逆に足を引っ張っているように感じます。「ASCM CONNECT 2023」でも、ウィンストン・チャーチルの「完璧は進捗の敵」という言葉を、多くの登壇者が引用していました。前に進むことが重要で、全てを完璧にしようとする考えは、現代の流れにやや遅れているのではないかと感じています。

2.SCMには世界標準がある

次に、SCM(サプライチェーンマネジメント)に関する標準の話をしますが、日本では標準化が創意工夫から外れたつまらないルールだったり、イノベーションの反対と捉えられることがあります。しかし、アメリカやヨーロッパなどの多文化多民族地域では標準化の活動が活発に行われています。特にSCMでは、国際的なオペレーションや管理が必要となるため、共通の概念を持ってコミュニケーションできることは、物事を円滑に進める上で極めて重要です。

このような”標準”のコンセプトが共有されていないことも、SCMに関わるITプロジェクトの期間の長さにも関係しているかもしれません。

現在、ASCM(Association for Supply Chain Management)という団体がサプライチェーンの知識体系を定義し、各目的や領域別に教育や認定資格を提供しています。スライドに表示されているのは、サプライチェーンの4種類の資格です。これらの資格は日本ではあまり知られていませんが、グローバルには9万人以上の資格保有者がおり、アメリカやヨーロッパでは資格保有者の給料の基準が変わるとも聞きます。

参考として、日本でこの世界標準のサプライチェーンの知識を学ぶための支援団体としては、日本生産性本部が代表機関となっており、教育やラーニングシステムなどを提供しています。

SCMの標準においては、概念の共有が重要です。世界標準のSCMについて学びたい方は、書籍「世界標準のSCM教本」を参考にすると良いと思います。

3.常態化したサプライチェーンの混乱に備える

ここからはSCMの国際会議「ASCM CONNECT 2023」についてです。9月11日から13日までアメリカのケンタッキーで開催され、弊社からは3名で参加してきました。日本からの参加者は弊社メンバー3名に加えて、日本のサプライチェーンの教育機関(ASCM)から1名の4名だけと、非常に寂しい状態でした。来年は、もっと多くの方が日本から参加すると良いですね。

「ASCM CONNECT 2023」ではサプライチェーンのプロフェッショナルによる講演や事例の発表が行われまして、私が印象的だなと思ったのは大きくは2つあります。

1つ目は、アメリカが非常にグローバル視点でSCMに取り組んでいることです。国家間の対立や環境の問題というのが大きな国際問題となっています。サプライチェーンがどこで止まってしまうかわからないことが常に懸念されており、そんな中でアメリカのSCMに関わる方が熱く議論していました。2つ目は、AIを含む技術の話です。人間を無視した技術はダメというようなことが常に語られていました。

異常気象やパンデミック、国際紛争など、異常が日常となっており、いつどこで物の供給が止まってもおかしくない状況です。そんな時に何をすれば良いのか。もちろん未来が予測できれば良いのですが、そんなことはできません。うまく状況に適応している企業は、常にブレーキとアクセルを踏む準備をしていて、意思決定を支援するツールやインフラを持っていることが多いです。

具体的にお伝えしますと、例えば中国の工場から供給が止まったらとか、もし1ドル160円になってしまったらなど、What if Simulationというのですが、このようなことをツールやインフラを活用して、意思決定をしていることが非常に重要だと考えています。

4.人を活かすデジタル化

最近、ChatGPTを代表するAIが、人の業務が完全に置き換わるんじゃないかというような話も出てますが、サプライチェーンの分野においては、テクノロジーに全て頼るのではなくて、人が意思決定を行う支援する仕組みと考えています。

SCMというのは、例えると企業における血管です。この血管をうまく動かす心臓にあたる仕組みをITやAIが支援するべきだと思います。

そうすることで、定番商品や定常業務はシステムによって効率化され、人は新商品や戦略製品の計画策定・異常時の対応に集中できるようになります。

最後に、弊社が提供するSaaS型SCMサービス「PlanNEL」について簡単にご紹介します。

これまで弊社は大手企業のお客様にサービスを提供してきましたが、日本には製造業が多く、中小企業の数も多いです。中小企業にとって、SCMのシステムを導入するにはコストと時間がかかってしまい、中小企業にとっては導入のハードルが高いのが課題でした。

そこで、中堅企業向けにカスタマイズが不要なSaaS型SMCサービスとして「PlanNEL」の提供をしております。需要予測、在庫計画、補助計画、販売計画の4つのモジュールを分けて、各機能ごとに順番に導入することも可能です。

2021年9月のプロダクトリリースから4社に導入していただいております。主な機能としてはAIを用いた需要予測があり、約80%精度がでています。統計を元にした需要予測のほか、天候や為替などの外部要因も取り入れることができます。

多くの企業で計画策定をExcelで行っていると思いますが、定常的な業務をPlanNELに任せることで、作業時間を大幅に短縮できます。また、過剰在庫や欠品率を30%減少させることも可能です。中小企業にとってキャッシュフローの改善や無駄の削減は非常に重要です。また、担当者が辞めた際に業務が継続できないというリスクも避けられるようになります。

業務のイメージとしては、需給担当と営業担当がいる際に、需要予測は「PlanNEL」が行います。販売計画には営業担当が持っている販促情報などの意思入れを行います。そのため、ベースラインとなる需要予測をPlanNELにて行えます。

次にどのくらいの量の在庫を持っておくべきかを、PlanNELに自動的に計算させて、どれだけ生産する・仕入れるかを数値化して需給計画・補充計画を策定します。

このようなイメージで業務を進めるのですが、このPlanNELのシステムを年商100億円ほどの企業様に3ヶ月〜6ヶ月くらいの期間で導入させていただいております。

最後に、私たちのミッションについて触れたいと思います。ある有識者の方からPlanNELについて「なぜ高機能の計画システムを安価に提供するのか」と質問されたことがあるのですが、その理由は、サプライチェーンの仕組みが中小企業の経営変革に貢献できる可能性を大いに秘めていると考たからです。

欧米製のソフトウェアは高価であり、中堅企業には手が出せないものが多いため、弊社は低価格で早く導入することで、中堅企業の経営に役立つサポートをすることで、小さな会社から大きな会社まで、全ての企業が持続可能であることに弊社は取り組んでいきたいと思っております。

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