
【セミナーレポート】グローバルSCMマネージャー経験者に聞いてみよう!SCMの疑問・質問にお答えするセミナー

ザイオネックスでは、SaaS型SCMサービス「PlanNEL(プランネル)」の提供だけではなく、SCM(サプライチェーンマネジメント)に関連するセミナーも開催しております。今回は、2025年2月26日(水)に開催した「グローバルSCMマネージャー経験者に聞いてみよう!SCMの疑問・質問にお答えするセミナー」のレポートを公開いたします。
ザイオネックスで、SCMプロジェクトに関するご相談を承る中で、多くの皆様から共通のご質問をいただいており、同様のお悩みを抱えている方が多いと感じております。
そこで本セミナーでは、「SCMの組織はなぜ必要ですか? 何をするのですか?」「需給計画は、なぜ一元管理が良いとされているのですか?」「AIを利用した需要予測はどのぐらい使えますか?」「需要予測の精度を上げるにはどうすればよいですか?」「CRMソフトウェアで営業の販売見込みを管理していますが、SCP専門のソフトウェアを利用するメリットは何ですか?」といった「そもそも」な疑問・質問に対して、弊社の経験を基に、回答いたします。
藤原:
本日はセミナーにご参加いただき、誠にありがとうございます。本セミナーは「グローバルSCMマネージャーに聞いてみよう!SCMの疑問・質問にお答えします」というタイトルで開催いたします。
弊社がお客様からよくいただくSCMに関するご質問について回答するだけでなく、本日のセミナーにご参加されている皆さまからの疑問・質問にもお答えしながら進めてまいります。また、前回のセミナーと同様に、大手電機機器メーカーでSCMに従事されていた今井田さんをお迎えしております。
まず、今井田さんのご経歴をご紹介いたします。今井田さんは、大手電機機器メーカーにて海外営業を担当された後、香港や中国の工場に出向し、生産管理を経験。その後、本社にてSCM業務を担当され、SCMに関する幅広い分野で豊富な経験を積まれました。現在は、さまざまな企業のSCMプロジェクトのアドバイザーとして支援を行っていらっしゃいます。
本日は、そのような豊富な経験を持つ今井田さんに、皆さまからのご質問にお答えいただく形で進めていきます。それでは、さっそく最初のご質問です。
「SCMの組織はなぜ必要なのでしょうか?また、どのような役割を果たすのでしょうか?」
この質問について、今井田さんのご意見を伺いたいと思います。
今井田:
まず、SCMの捉え方について説明します。この画像の左側に「サプライヤー」と書かれた部分がありますが、ここが部材の調達元になります。そして、中央の青い部分が自社にあたります。ここで部材を工場に受け入れ、生産を行い、最終的に販売部門へと渡します。その後、青い部分から右側の流通部門へと移り、最終的に消費者(エンドユーザー)のもとへ届く、という流れを示した図になっています。

さらに、図の上部には「1: 自社内のSCM」と書かれていますが、これは中央の青い部分を指しています。SCMを考える際には、まずこの自社内の動きをメインに見ることになります。しかし、実際に運用していくうえでは、左側のサプライヤーから右側の消費者までの一連の流れ全体を事業として捉えなければなりません。そのバランスを適切に保つことが、SCM組織の基本的な役割となります。
次に、SCM部門の役割について説明します。図の左下には「マーケティング」と書かれていますが、これは主にセールス(販売)を指します。一方、右側の「製造・購買」は、ものづくりや供給を担う部門です。SCM部門では、これらのバランスを見極め、事業の売上方針や市場戦略に合わせた供給体制を整えていく必要があります。こうした状況を整理し、事業のトップに報告しながら、今後の供給方針をリードするのがSCM部門の重要な役割です。

藤原:
図を見ると、SCMの組織が中央に配置され、さまざまな部門をピボット的に結びつけていることが分かります。そのため、SCMに携わる人は幅広い知識や経験を持つことが求められます。今井田さんは営業と工場両方の経験がありますが、実際にSCM業務に従事していた方々はどのようなバックグラウンドを持っていたのでしょうか?
今井田:
SCMを進めるうえで重要なのは、他部門との円滑なコミュニケーションです。SCMは前工程・後工程の関係を理解し、各部門の業務内容を把握したうえで連携を取る必要があります。もし各部門の業務を理解せずに話を進めようとすると、意思疎通がうまくいかず、業務の円滑な遂行が難しくなります。そのため、全体の流れを俯瞰しながら適切に調整できる人材が、SCMの現場では活躍していました。
藤原:
なるほど、そうですね。今井田さんがいらっしゃった企業では、サプライチェーンマネジメント(SCM)に従事している方の中には、女性が多かったように思いますが、その点についてはいかがでしょうか?
今井田:
そうですね。私が所属していた企業の女性スタッフは、きめ細やかさやコミュニケーション能力に優れ、相手の立場を考えながら業務を進めることが得意な方が多かったと感じます。そのため、SCMの仕事において活躍される女性スタッフが多かったのではないかと思います。また、SCMではデータを扱う機会が多く、地道にコツコツと作業を進めることも重要になります。そういった点でも、女性に向いている職場だったのかもしれません。ただ、もちろん男性が適していないというわけではなく、あくまで傾向の話ですね。
藤原:
そうですね。ありがとうございます。
SCMの組織をこれから確立していこうという企業も少なくないと思います。特に、製造を主軸としてきた企業では、生産管理や購買部門がSCM的な役割を担うケースが多いと思います。ただ、そのような場合、どうしても視点が偏りがちになってしまうこともあるかもしれません。
SCMの組織では「何がこれから必要とされるのか」という需要計画も非常に重要になります。そのため、左側のマーケティング部門としっかりと連携することが求められます。また、事業部長(事業運営責任者)との関係も重要ですよね。
今井田:
最終的には、年間予算や中期計画といった計画に沿った事業運営がベースになります。そのため、事業部長の方針に沿ってSCMをコントロールしていかなければ、全体のバランスが崩れてしまうことになります。したがって、事業部長とのコミュニケーションは非常に大切です。
藤原:
そういった意味で、SCMの部署は中立的な立場を保ちながら、全体を俯瞰して調整を行う役割を担います。いわゆる「コントロールタワー」と言われることもありますが、単なる指示を出して押しつけるのではなく、各部門と調整しながら最適な戦略を描くことが求められます。同時に、単に言われたことをこなすだけの部署でもない、という点も重要ですね。
さて、次の質問です。「需給の一元管理について、なぜ需給計画は一元管理が良いとされているのですか?」というご質問をいただいています。この点について、いろいろと考えられる部分があると思いますので、今井田さんのご意見をお話しいただけますか。

今井田:
一元管理とは、この図の通り、サプライヤーから消費者までの全体の流れを管理することを指します。しかし、実際に運用する上では、需給のバランスを取るフォーキャスト(予測)が非常に難しく、多くの企業が課題を感じているのではないでしょうか。
図の下部には「リードタイムを考慮して検討する」と記載していますが、需給計画の一元管理では、供給側と販売側のリードタイムをどう調整するかが重要なポイントとなります。

例えば、12月に消費者(エンドユーザー)に100個の商品が流通するとします。その場合、流通部門では1ヶ月前の11月には在庫を150個ほど確保しておく必要があります。そして、自社の販売会社は、流通向けの販売計画を10月~11月に設定し、150個を出荷する計画を立てているとします。
私の経験では、販売会社が海外にあるケースが多かったため、アジアで生産した商品を海外へ輸送するには、1ヶ月程度のリードタイムがかかりました。そうすると、流通への売上が10月~11月に設定されている場合、販売会社は9月~10月には在庫を確保しておかなければなりません。
さらに、輸送リードタイムを考慮すると、工場での生産は7月~8月頃に開始する必要があります。そして、そのためには7月から工場内での部材準備が始まっているはずです。当然ながら、サプライヤーへの発注はそれよりも前に行われるため、12月の消費者への販売を達成するためには、半年から1年の準備期間が必要になります。
自社だけを考えるのであれば、需給管理を自社の販売計画だけで考えてしまうことがありますが、最終的に消費者へ商品が販売されない限り、流通に在庫が蓄積されてしまいます。
実際にあった例としては、最初は販売が好調で流通での在庫が枯渇していたため、生産を行っていたものの、次第に在庫が蓄積されるようになり、最終的には流通の在庫が過剰となってしまい、流通から商品が動かなくなったというケースがありました。このような状況になってしまうと、工場やサプライヤーにまで悪影響がでます。つまり、「最終的に商品が売れていかないと、どこかで在庫が滞留してしまう」という点をしっかりと把握し、サプライチェーン全体を見ながら計画を立てることが非常に重要です。
この図の中央(青い部分)である自社内の需給管理だけを見ていると、最終的な販売状況が適切に把握できず、供給側にも悪影響を及ぼしてしまうため、需給の一元管理を行うことで、サプライチェーン全体のバランスを取り、最適な需給計画を実現することが重要なのです。
藤原:
一元管理が重要だとはいえ、実際には十分に機能していない企業も多いのではないかと思います。例えば、販売部門と製造部門が完全に分断されてしまっているケースもあります。こうした状況を改善するために導入されるのが、ERP(統合基幹業務システム)や需給計画系のシステムです。しかし、それだけでは解決できない問題もあります。
先ほど今井田さんから話があった通り、流通在庫が過剰になってしまうと、販売会社から見ると「売上が好調」と思い込んでしまうことがあります。しかし、実際には物流の中間地点である流通企業の在庫が過剰になり、最終的には販売会社から流通企業へ出荷できなくなる、という状況が起こります。こうした事態は、コロナ禍の際にも多くの企業で発生しました。
そのため、一元管理は自社内だけで完結するものではなく、流通企業やサプライヤーともデータを連携できる状態が理想的です。とはいえ、流通企業などの他社情報を取得するのは簡単ではないのが現実です。この点についてはどうお考えでしょうか?
今井田:
他社の在庫情報や流通データを共有するのは難しい面もありますが、各社でさまざまな努力をされています。例えば、ある会社では売上の7割程度の流通データを取得し、需給計画に反映していました。そうした取り組みを行うことで、流通の状況をより正確に把握し、適切な在庫管理を進めることが可能になります。
また、先ほどの会議体の話にもありましたが、販売実績のデータは社内システムで把握できます。しかし、ここで重要なのは「現在の流通在庫がどうなっていて、今後どのように推移していくのか」を予測し、議論することです。
藤原:
営業部門にとって、流通企業は「顧客」にあたります。そのため、営業担当者は流通企業の状況を把握し、先を見越して情報を収集することが重要です。こうした情報が、もし一元管理されたプラットフォームで共有されていれば、工場やサプライヤーへの情報共有もスムーズになり、全体最適な需給管理が可能になりますね。
今井田:
あとは、一元管理は単に「データをまとめる」ことではありません。システムだけでなく、その背景にある「現場で何が起こっているのか」という生の情報を共有することも重要です。例えば、会議の場などで現場のリアルな状況を共有できれば、供給側の関係者もより主体的に動けるようになります。
藤原:
「一元管理」とは、単なるデータの集約やシステムの話ではなく、情報の正しい理解と共有、そしてそれを活かす仕組みを作るということですね。先ほどのサプライチェーンの組織についての話でもありましたが、会議体などの場が「情報の一元管理」の役割を果たすことも重要ですね。
今井田:
会議では、データの裏付けをもとに議論し、それをもとに適切な方向へ進んでいるかを確認する場としての役割が求められます。

この図では、棒グラフが「販売」、折れ線グラフが「在庫」を表しています。矢印が示している部分は、実際に在庫がどのように蓄積されていったかを示しています。例えば、過去のデータとして在庫が増えていることが分かっていたとしても、重要なのは「今後どうなるのか」を予測することです。
この「フォーキャスト(予測)」が重要なポイントとなります。例えば、販売は11月のクリスマスシーズンをピークに下降していくと予測されます。それに伴い、在庫も減少していく必要があります。このように、事業運営において「年間の売上達成に向けて、販売と在庫の動きを確認する」ことが非常に重要です。
この在庫・販売の動きに基づき、供給数量を決定し、それに沿って生産計画を立てます。生産計画が決まれば、サプライヤーへの発注数量も自ずと決まってきます。こうした流れを可視化して確認し、一元管理を行うことで、サプライチェーン全体を最適化していきます。
藤原:
販売・生産・倉庫の在庫管理がバラバラに行われていると、このような全体の流れを把握するのが難しくなります。過去の販売実績や生産実績、在庫データについては、多くの企業がERP(統合基幹業務システム)などで管理していると思います。しかし、未来の計画についても可視化できれば、「どのように動けば良いのか」がより明確になりますね。
今井田:
このグラフを見ると、左側が過去のデータであり、右側が未来の予測データになります。例えば、右側のデータが大きく変動している場合、それが目標としている姿に近いのかどうか、無理のある計画ではないかといったことが、視覚的に分かりやすくなります。
藤原:
サプライチェーンでは「PSI(Production・Sales・Inventory=生産・販売・在庫)の状況を確認する」ことが重要視されています。これは完成品の在庫管理だけでなく、製品を作るための部材や原材料の在庫管理にも当てはまります。例えば、部材や原材料の在庫状況を同じように可視化できれば、サプライヤーへの発注計画もより適切に立てることが可能になりますね。
次の質問になりますが、「データの一元管理は非常に重要ですが、すべてのデータを一つに統合する必要があるか?」というと質問があります。企業によっては「うちは事業部ごとに異なる運営形態をとっている」というケースも多いと思います。同じ会社内であっても、まるで別会社のように異なる事業部が存在する、どのように一元管理を進めるべきでしょうか?

今井田:
私が所属していた企業では、SCMを事業部単位で運用していました。ただし、物流や基幹システムなどは共通化し、事業の運営自体は各事業部が独自に行うという形を取っていました。つまり、「どこまでを一元管理し、どこから個別管理するか」を企業ごとに決める必要があります。
藤原:
ここで重要なのは、「すべてのデータを一つのシステムに統合すること」ではなく、「事業部ごとに一元管理されている状態を作ること」です。そのうえで、全社レベルの経営判断に必要なデータが集計できる仕組みを作ることが求められます。
次の質問です。現在、AIが非常に注目されていることもあり、「AIは需要予測の精度を向上させるのか?」というご質問をいただいています。また、「AIを活用した需要予測はどの程度使えるのか?」や「需要予測の精度を上げるにはどうすればよいのか?」といった疑問もよく寄せられます。
この点について、私からいくつかお答えしたいと思います。

まず、需要予測はどのように行われるのかといいますと、機械学習を活用した需要予測では、主に過去の実績データが重要になります。十分なデータが存在しないと、学習が不十分となり、精度の高い予測を行うことは難しくなります。例えば、1年に数回しか販売されない商品の需要予測は非常に困難です。
また、過去の販売データに加え、気温や天候、為替レートといった需要に影響を与える要因もインプットデータとして活用されることがあります。こうしたデータを機械学習モデルに取り込むことで、より高精度な予測を目指します。
しかし、すべての需要予測が正確にできるわけではありません。AIが得意とするケースと、不得意なケースがあるからです。
AIによる需要予測が比較的高精度で機能するケースと、難しいケースを整理すると、AIが得意なケースとしては、販売データが豊富にある、明確なトレンド(季節変動やイベントなど)があるなどの一定の規則性が見られるものです。このようなケースでは、AIが過去のパターンを学習し、比較的高精度な予測を行うことができます。今井田さん、この点についてはいかがでしょうか?
今井田:
そうですね。私もこうした視点を持ちながらデータを分析していました。特に、扱うSKU(品目数)が多くなると、データ量が膨大になるため、AIをうまく活用して生産性を向上させることが重要だと考えています。その上で、「人間がどこまで介入すべきか」「どこをAIに任せるべきか」を日々検討していました。

藤原:
AIによる需要予測はあくまで「フォーキャスト(予測)」であり、最終的な意思決定は人が行うべきという点がポイントです。一方で、トレンドがあり、データが豊富に存在し、一定の規則性がある商品については、AIの予測に任せることで業務効率を向上させることができます。このように、AIと人間の役割を適切に分担することが、より精度の高い計画を立てるための鍵となりますね。
今井田:
AIはどんどん進化をしていくので、業務の生産性をあげていくために、どんどんAIを活用するべきだと思います。一方で、AIを活用する上での注意点もあります。
SCMの供給準備はリードタイムが長いため、誤った予測をしてしまうと大きな影響を及ぼす可能性があるということです。需要予測を誤ると、不必要な生産を行ってしまい、在庫が過剰になったり、供給不足が発生したりするリスクがあります。そのため、AIの予測結果に対しては定期的に人間がチェックを行い、必要に応じて修正を加えることが重要です。
また、最終的な数値の説明責任は人(組織)にあるという点も忘れてはなりません。AIが導き出した予測であっても、最終的な判断は企業として行う必要があり、そのための仕組みを整えることが求められます。
藤原:
次の質問です。「SCPシステムは本当に必要なのでしょうか?」というご質問をいただきました。
この質問の背景として、例えば営業管理システムを活用して販売見込みを管理し、それらのデータや実績データをBIツールで分析しながら需給管理を行っている企業もあります。しかし、それでも「うまくいっていない」と感じている企業も少なくありません。
そうした企業から、「サプライチェーン専用のSCP(サプライチェーンプランニング)システムを導入すべきか?」という質問を受けることがあります。まず、この点について、私から質問に対して説明したいと思います。

この図は、サプライチェーン業務に関連するシステムの構成を表しています。
企業では、実績データや業務の実行に関わるシステムとして、ERPや生産管理システムを導入し、過去のデータを管理・集計しているケースが多いでしょう。
一方で、計画や可視化に関わる部分(青い部分)は、企業ごとに異なるアプローチを取っています。例えば、営業部門ではSalesforceなどを活用し、商談やプロジェクトの見込みを管理しているケースがあります。これは、もともと営業管理のためのシステムですが、将来の売上予測データも含まれているため、サプライチェーンの需要計画に活用できるのではないか、と考える企業もあります。しかし、営業管理システムだと営業の見込みや概要を捉えることメインになるため、SKU単位での需給管理には課題があることが少なくないと思います。
供給計画においても、日々の細かい計画ではなく、将来の在庫計画や調達・生産計画が整っていないこともあります。この部分は、ERPや生産管理システムではカバーしきれない領域であり、「PSI表」をExcelで作成したり、ERPを拡張して利用したりしている企業も多いと思います。
あとは、BIツールですね。最近は、さまざまなBIツールが普及してきて、複数のシステムを連携することで綺麗に可視化ができます。しかし、計画情報がないと過去の振り返りにしかならないため、将来の見込みとなるような需要計画や供給計画を、BIツールを活用して可視化することが大事です。しかし、バラバラなシステムで管理されているデータを繋ぎ合わせるのは非常に大変なため、専用のSCMシステムを利用するのが良いのではないか思います。今井田さんのいらっしゃった企業では、どのように管理されていましたか?
今井田:
私が所属していた企業では、事業計画のデータはSalesforceに入力されていました。SCM
部門もそのデータにアクセスし、よく確認していました。
営業部門が販売計画を作成する際には、Salesforceのデータを活用していましたが、会議体で事業部長が意思決定を活かす際には、SCM部門がSalesforceを含めて、さまざまなデータに手を加えながらPSI表を作成して利用していました。
藤原:
なるほど。財務予算(いつ、どれだけ、いくら売りたいのか)、前年実績との比較、営業が作成する販売計画、マーケティングが策定する計画など、さまざまな計画があり、これら複数の計画が絡み合っているため、営業だけの視点で需要計画を策定するのは難しいのではないかということですね。たしかに、営業管理システムだけで需給管理を行うのは少し限界があるかもしれないですね。
今井田:
私もSalesforceのデータは、数字だけを見るのではなく、営業活動そのものを重視していました。例えば、「営業がどのような活動をしているのか」「どの案件が順調に進んでいるのか」といった数字の背景にある活動データを確認し、「この案件は期待できそうだ」「この計画は少し厳しいかもしれない」といった感覚を持ちながら分析していました。
営業メンバーに直接聞かなくても、最低限のデータは自分で確認し、そのうえで営業担当者から追加の情報を得る、という形で活用していましたね。
藤原:
はい、そうですね。営業管理システムをSCMに活用するのは非常に有効な手段だと思いますが、営業管理システムだけで需給管理全体をカバーしようとすると、限界がありますね。
例えば、リードタイムを考慮した供給計画の策定、在庫基準の設定とそれに基づく購買計画の作成、工場の生産能力や設備の制約を反映した計画作成といった領域まですべて営業管理システムで対応するのは、非常に大変です。そのため、販売計画と供給計画の整合性を取る部分は、SCPシステムなどの専門ツールに任せるのが合理的だと考えます。
弊社のお客さまでも、「SCPシステムを導入したことで、需要計画と供給計画を入れておくとPSI表が自動的に作られるので、かなりその分の工数が減った」というお声もいただいております。
本日用意した内容は以上となりますが、追加でセミナー参加者の方から2つの質問をいただいておりますので、それについてお答えしたいと思います。
まず1つ目の質問ですが、「SCMの組織にはどのような人材が適しているのでしょうか?」
今井田:
先ほどもお話ししたように、やはり前工程・後工程の流れを理解し、関係者と適切にコミュニケーションを取れる人が必要です。また、リードタイムなどの制約を考慮したうえで、現在の問題と将来発生しうる課題を把握し、適切な対策を講じられる人材が求められます。
私自身も、そういった人材を特に必要としていました。
藤原:
2つ目の質問ですが、「AIによる需要予測が向いている業界と向いていない業界があるのではないか?」というご質問をいただきました。今井田さんがいらっしゃった会社では、産業向け(BtoB)と消費者向け(BtoC)の製品を両方取り扱っていたと思います。その中で、どのような違いがありましたか?
今井田:
産業向けの製品では、需要予測というよりも「商談管理」が重要でした。
産業向けビジネスの場合、企業ごとの大口取引が多く、景気の変動や顧客企業の業績によって計画が大きく左右されます。そのため、AIで需要を予測するというより、各企業の動向や商談状況をしっかり把握することが重要でした。
一方で、消費者向け(BtoC)の製品は、過去の販売実績が活用でき、販売期間があらかじめ決まっているケースが多いため、AIの需要予測が適していると考えています。
藤原:
はい、そうですね。私も同じように考えています。
特に、産業向け製品ではトレンドを掴むのが難しく、営業の動向や商談情報をしっかり把握することが最優先になります。そう言う意味では、営業管理システムを活用して商談状況を把握することが非常に有用になりますね。
今井田:
はい、私も営業管理システムをよく活用していました。
将来はわかりませんが、現在のところ、産業向けビジネスより消費者向け(BtoC)の方がAIの需要予測を活用しやすい傾向にあるというのが一般的な見解ではないでしょうか。
藤原:
はい、ありがとうございます。
本日いただいたご質問について、お答えしてきましたが、SCM組織に必要な人材や、AI需要予測の適用範囲についてご理解いただけたでしょうか?
本日のセミナーは以上となりますが、もし追加でご質問やSCPシステムにご興味がございましたら、いつでもお問い合わせください。では、本日はこれで終了とさせていただきます。