第二回「設計・開発の課題にマネジメント視点で取り組む」

2020.7.10 / Dynamic Task Manager

第一回では製造業をお客様に持つ弊社が感じた、製造現場の今、現場で抱える課題についてお話ししました。今回はその解決手段として開発したDynamic Task Managerのコンセプトについてお話ししていきます。

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設計開発のプラットフォーム

具体的な手段を決める前に、計画を共有するプラットフォームとはどんなイメージなのか、何を狙いとするのかを議論しながらコンセプトを描くことにした。その際の青写真が図1で示す「エンジニアリングプラットフォーム」である。現在の弊社の提供するDynamic Task Manager(DTM)の元となる考え方である。

 

図1エンジニアリングプラットフォームのコンセプト

材料開発、形状設計、金型製作などそれぞれ特化した仕事の内容をすべて把握しているようなスーパーマンは存在しない。細かな業務の内容でなく工程間の重要なタスクやマイルストンの計画と進捗を共有できること、そして開発者であるエンジニアは「管理」されることを嫌うので日常業務の中で必然的に利用する機能を組み込むこと。これらを前提として、計画時点で複数の案件のコンフリクトを調整できること、また“管理のため”でなく“関係者の利便性のため”を、目指す姿として設定した。工程の日程計画に対して進捗がわかる、計画に際しては担当する人の負荷が見える、さらに設計開発の成果物も共有できる、後工程への依頼の発行や最終的には予算管理も可能とする。こうした最終的な姿を描いたうえで、それに向かってどのようなステップで進むべきかのロードマップを描いた。

これまで全く実施していなかったプロセスを導入するのは、組織にとっては非常に難しい。特に日本企業はトップダウンで物事が進まないので、最初から多くのことに取り組むのでなく、できるところから手を付けて一つ一つ成果を上げていくしかない。各ステップで達成目標を設定し段階的な拡張を行っていくことが重要である。

この仕組みを構築するにあたって、市販のパッケージの利用、スクラッチ開発など、具体的な手段を、複数の視点からの評価軸を決めて利用するソフトウエアを選定することにした。(図2)

図2プラットフォーム選定表

「プロジェクトマネジメント」が最初に必要とされるソフトウエア機能であったのでいくつかのパッケージソフトを比較した。当時でもそれなりに良いものもありどれも教科書通りのプロジェクトマネジメントには適合していたが、モノづくりという企業ごとの個性を持ったプロセスにはそのまま使えない。その時Aras Innovatorが日本で提供を始めたことを知り調査してみた。Aras Innovatorであれば、PLMソフトウエアであるため技術領域全般を支援する機能が一通りそろっているうえにデータベースやソースが公開されているので追加開発も可能で拡張性が高い。かつサブスクリプションという価格体系なので初期費用が抑えられる。結果、Aras Innovatorを利用した追加開発を行うことに決定した。

 

共創の“場”としてのDTM

さて、このような経緯で生まれた弊社のDTMであるが、その後、Aras Innovatorのプロジェクトマネジメントソリューションのアドオンパッケージとして数回のバージョンアップを行い、利用していただく企業も増えてきた。ただし、日本では、上記で挙げた企業の例と同様に、量産前までのプロセスを横断してマネジメントする仕組みをもっていなかったので、設計開発の日程計画の策定と実績登録、さらに一歩進んで成果物管理から始めているケースが大部分である。

そういう意味では、まだ有用性の検証は途上ではあるのだが、はじめの一歩としても以下のような有用性を挙げていただいている。

  • 開発からリリースまでの日程計画と進捗が手に取るようにわかるようなって仕事がやりやすくなった(プロジェクトマネージャ)
  • 自分の担当する仕事とその期限が通知されるので漏れがなくなった(担当者)
  • 前工程が完了するとすぐに前工程の成果物や依頼書が確認できる。以前はメールに埋もれてしまっていたが文書ファイルを探す手間が省ける(担当者)
  • 出張先からも進捗や課題がわかるのでフォローができる(業務リーダー)
  • 全体の日程と進捗がわかるので段取りを立てやすくなった(業務リーダー)
  • 計画策定時に担当者の忙しさを確認して仕事が割り当てられるので、特定担当者への偏りが少なくなった(事業部リーダー)

 

これらを見ると、DTMによるプロジェクト管理が決して、管理者のためだけでなく、実際の業務を行う担当者の方々にも役に立っていることがわかる。これまで個別に行っていた業務が一つのデータベース上で繋がって、お互いがお互いの仕事を確認しながら協働で仕事をしているという実感をもっていただいているようである。

さらに、Aras InnovatorのVisual Collaborationを利用すれば、途中成果物に対してマークアップをつけると共にお互いのコメントをスレッドとして残しながら開発を進めるということも可能になる(図3)

図3 Aras InnovatorによるVisual Collaboration(Aras社のサイトより転載)

また、弊社もソフトウエアを開発する企業であるのだが、自社がリードする顧客プロジェクトでDTMを利用している。顧客のユーザ部門、情報システム部門とで、プロジェクトのタスクとそのスケジュールと実績を共有することで毎週の出張を伴う進捗会議に縛られることがなくなった。課題がある場合はそのタスクに対して、従来から利用していたWebの課題管理ツールをリンクして登録する。登録された課題はプロジェクトメンバーで共有し、解決するまでコメントや対策を記入していく。進捗や課題の管理は特定のマネジャーにお任せでなく、各人がマネジメント意識をもって取り組むことができるようになった(図4) メンバーにとってはプロジェクトのもう一つの“場”となっている。

 

図4  DTM課題からリンクされたScrum Boardの例 (Atrassianのサイトより転載)

 

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