2026.03.04

経営と現場でなぜ「話が噛み合わない」のか?事業運営のPDCAでSCMの認識齟齬を解消する枠組み再構築セミナー|SCMセミナーレポート

経営と現場でなぜ話が噛み合わないのか

ザイオネックスでは、SaaS型SCMシステム「PlanNEL(プランネル)」の提供だけではなく、SCM(サプライチェーンマネジメント)に関連するセミナーも開催しております。今回は、2026年2月26日(木)に開催した「経営と現場でなぜ『話が噛み合わない』のか?事業運営のPDCAでSCMの認識齟齬を解消する枠組み再構築セミナー」のレポートを公開いたします。

経営が見ている数字と、現場の実感が合わない」このような会話のズレは、なぜ起きるのでしょうか? それは、組織内で「計画」と「実績」の定義、そして「全体」と「個別」の責任範囲が正しく整理されていないためです。互いの言語が異なるままでは、どんなにシステムを導入してもSCMは機能しません。

本セミナーでは、改めて「事業運営のPDCA」の基本に立ち返ります。認識齟齬の正体を解き明かし、経営と現場が同じ目線でSCMを推進するための「共通の枠組み」をお話しいたします。

なぜ製販会議は噛み合わないのか?

ザイオネックスの藤原:
本日は、私たちがお客様を訪問する際によく伺う課題についてお話しします。経営層がサプライチェーンについて十分に理解されていないことや、現場が日々の業務で抱える困りごとについて、両者の認識が噛み合わずに生じる問題が見受けられます。

その結果、経営層からは「現場の課題は現場で解決してほしい」と言われるものの、現場からは「現場だけの努力では解決できない問題であることを、なかなか経営層に理解してもらえない」というお悩みの声もよく耳にします。本日は、こうした話題を中心にお話ししていきたいと思います。

まず、サプライチェーン管理において「生販会議」を実施されている企業は多いと思いますが、よく議論が紛糾することがあります。その原因は皆様もお感じかもしれませんが、組織内の縦の階層や、横の部署間の機能の違いにより、それぞれの役割や責任、視点が異なることにあります。

例えば、経営層であれば、キャッシュフローやROIC(投下資本利益率)といったKPIを最も重視し、営業部門であれば事業全体の売上を重視します。一方、SCM部門は、日々の在庫の増減、安全在庫の水準、在庫回転率などを主に気にします。

さらに現場の視点では、目の前の稼働率や欠品率といった指標が関心の的となります。このように、各部門によって見ている指標が違うだけでなく、時間軸も大きく異なります。

経営層は、社外に向けて売上予算や実績を発表する必要があるため、上場企業であれば主に四半期ごとの対応が求められます。そのため、経営層の時間軸としては、四半期単位で管理や見直しを行うことが一般的です。一方、営業やSCM部門では、月単位、あるいは細かい業務であれば週単位となります。現場では日単位、場合によっては時間単位で管理していることもあると思います。

続いてPDCAの回し方ですが、これは誰を起点にしているかによります。経営層は、やはり株主向けとなります。営業部門は、社内の予算に対してどれだけ達成できているかという点が起点になります。SCM部門であれば、調達予算を上回っていないか、あるいは発注したものが期日通りに納品されているか、といった点になります。そして現場の作業では、生産や出荷などが中心となりますので、より細かな視点になります。

つまり、会社全体のPDCAを大きく回すことは難しく、それぞれの階層や部門、責任、役割の範囲内で個別にPDCAを回しているのが実態だと思います。このように、それぞれが見ている視点や時間が異なるため、意見の対立や判断のズレが発生します。これは誰かの人間関係が悪いといった問題や、単なる認識のズレではなく、組織の構造自体に起因する問題だと考えています。

この認識が合わない典型的な原因を、組織構造の観点からあげてみます。非常によくあるケースです。

例えば、事業部長は期末のBS(貸借対照表)の数字を良くしたいため、「在庫を圧縮し、過剰在庫を抑えてください」と指示します。しかし営業部門は、期末であるかどうかにかかわらず、販売機会を逃さないように備えたいと考えます。そのため、「欠品は絶対に起こさないよう、常に在庫を確保してください。足りないものは増産をお願いします」と要望します。ここでやはり、事業部長と営業部門の間で意見の食い違いが生じ、それぞれの目指す方向性が異なってしまいます。

さらに調達担当者は、調達単価を下げて原価低減に貢献したいと考えています。しかし、部品の最低発注量を下げると単価が上がってしまうため、過剰在庫を防ぐために発注量を抑えたいという思いとの間でジレンマを抱えることになります。過剰在庫を抑えるために発注量を減らすとなると、発注ロットや発注数を少なくする必要がありますが、そうすると購買単価が上がってしまいます。これは調達担当者にとっては自身のミッションを果たせないことになるため、事業部長の指示をそのまま聞き入れるわけにはいかない、というジレンマが生じます。

また、生産部門においても同様です。営業部門から「増産してほしい」と依頼されても、生産部門は生産ラインの能力を計画通りに稼働させたいと考えているため、急な増産には対応できません。ラインの設備やメンテナンスの調整、設備の追加、人員の手配、稼働時間の延長といった対応は、すぐには実行できないからです。このように、生産部門にとっても急な計画変更は難しいため、ここでも部門間の対立が生まれてしまいます。

SCMに関する誤解

そもそもSCMの業務とはどのようなものかを、PDCAサイクル(Plan・Do・Check・Action)の枠組みで改めて考えてみたいと思います。弊社がいつも使用している図を使って説明します。

まず「S&OP(評価)」という部分ですが、これはデータの可視化やKPIの評価などを行うフェーズであり、PDCAサイクルにおける「Check」にあたります。

次に、SCP(サプライチェーンプランニング:計画系)です。これはSCMにおいて非常に重要な活動であり、中心となるのは「需要計画」と「供給計画」の2つです。

需要計画には、予算計画や需要予測が含まれ、ここではAIや統計手法がよく用いられます。さらに、需要予測に「人の意志入れ」を行って販売計画を立てていきます。

一方、その作成した需要計画に対して「供給計画」は、どれだけ在庫を持つかという在庫計画や、どれだけ発注するか、あるいは生産依頼をかけるかという補充計画を立てます。そして、それが本当に供給可能かどうかをシミュレーションして「供給計画」を立てます。この「需要計画」と「供給計画」を中心としたプロセス全体を、私たちは「計画系」と呼んでいます。

さらに、実行系の部分は図の中でグレーにしていますが、皆様の会社でもERPなどの基幹システムを導入されて業務をしていると思います。これがないと日々の業務が回らない状態だと思います。このような枠組みでSCMの業務全体を捉えると分かりやすいと思います。

では、そのような中でSCM担当者は何を行っているかと言うと、単なる調整役というわけではなく、コントロールタワーのような役割を担っています。マーケティング、営業、調達、生産統括、生産管理といった各部門の方々がそれぞれ行っている業務を、事業全体とつなぐ役割を果たしていると考えています。

このようにお伝えすると、「需要予測がきっちりできていれば、あとは問題ないのではないか」と考える方もいると思います。もちろん、需要予測も重要な要素です。弊社へのご相談でも、「需要予測ツールを探している」といったお問い合わせを非常に多くいただいております。しかし、「予測さえできれば十分か」というと、少し違うのではないでしょうか。

最近はAIが普及し、需要予測の手法も多様化しているため、そこまでコストをかけなくても需要予測ができるようになってきました。しかし、サプライチェーンマネジメントはあくまで「マネジメント」ですから、PDCAサイクルを回していく必要があります。

その中で最も重要なのは「意思決定」です。「サプライチェーンマネジメントとは意思決定そのものである」と言い切る専門家がいらっしゃるほどです。つまり、不確実な需要に対して、在庫と供給能力を見極めて意思決定を下す仕組みこそが、サプライチェーンマネジメントだと言えます。

その中で、ミドルマネージャーの方々が本当に苦労されているのは、予測精度を上げることそのものではなく、「予測のブレがあることを前提に最適化すること」であり、これこそが重要なのだと思います。

少し前までは、サプライチェーンマネジメントというと「物流」や「生産計画」のことであると言われることも多かったのですが、最近は「需要予測」にフォーカスが当たっているように思います。

しかし、需要予測は必ずしも当たるものではありません。過去に起きたことと全く同じことが未来にも起きるのであれば当たるかもしれませんが、なかなかそうはいきません。外部環境が変わることもあれば、自社の事業環境も変わることもあるため、将来の状況は必ず変化します。したがって、「予測のブレを前提に何をするか」を考えることが一番大事なポイントです。

では、組織間の「認識のズレの震源地」はどこかと言うと、ここがまさに「需要予測」と「在庫」になると考えています。

例えば、営業部門が「これからも需要が増える」と予測したとします。そうすると、調達部門は「調達リードタイムが長いから、多めに発注しておこう」と考えます。

ここで、エアロバイクを販売するA社という企業のサプライチェーンを例にあげてみます。これは実際にコロナ禍で商品が非常に売れたA社の事例です。

A社は海外のサプライヤーに発注して製品を輸入し、直営店または卸売会社へ出荷します。卸売会社に出荷したものは小売店などを通じてユーザーに販売されます。直営店向けに出荷したものは、コアユーザー、つまりA社のことをよく知っているユーザーに販売されるという構造になっていました。

A社はコロナ禍で需要が大きく伸びたため、「これからも需要はどんどん増えるのではないか」と予測しました。しかし蓋を開けてみると、コロナ禍が落ち着いた後、エアロバイクはそこまで右肩上がりには売れませんでした。それにもかかわらず、フォーキャスト(需要予測)の見直しが遅れたため、当初の拡大シナリオの通りに発注を実行してしまっていたのです。

購買需要が減少している中で発注を続ければ、当然ながら流通在庫は過剰になります。その結果、発注残をそのまま引き取らざるを得ず、大量の過剰在庫を抱えてしまうという事態が発生しました。

このような場合、需要予測と在庫において、部門間で認識のズレが生じているのではないかと考えています。その際に考慮すべき要素は非常に多岐にわたります。例えば、サプライヤー側に原材料があるかどうかという問題もありますし、為替の変動も影響します。さらに、輸入品であれば輸送手段をどうするのかという問題もあります。在庫を保管するにしても、スペースが無限にあるわけではありませんので、倉庫の容量も関係してきます。

要するに、時間や場所など、さまざまな要素が複雑に絡み合うため、これらを属人的に調整することは非常に困難です。これらの調整を、Excelを使って行っている企業も多いと思いますが、品目数や顧客数の増加により、Excelでは対応しきれなくなっているケースもよくあります。このように複雑で依存関係が絡み合う要素を調整しようとすると、例えばブランド別に担当者を分けるなど、業務を分割して乗り越えるしかありません。

予測×在庫最適化で統合PDCAを回す

次に予測と在庫の最適化をどのように進めるべきかを考えてみました。結論から申し上げますと、現場単位で個別にPDCAを回しているだけでは、全体の最適化は困難です。私たちは「需給意思決定ループ」というコンセプトで話をしていますが、まずは関係者間でこの考え方に合意し、仕組み化していくことが重要だと考えています。

「そんなことができるのか」「これまで人が一生懸命やってもできなかったのだから、やはり難しいのではないか」とおっしゃる企業も少なくありません。しかし、担当者には部署異動や退職などがあり、常に同じ人が業務を続けられるわけではありません。だからこそ、これを属人的な業務ではなく「仕組み」として残し、担当者が変わっても対応できる体制を構築するべきではないでしょうか。

昨今では、データを非常に効率的に収集・活用できる環境が整ってきています。これは20〜30年前とは全く違う点だと思います。IT技術が向上し、AIが日常的に使われるようになり、コンピューターの性能も飛躍的に向上しました。MRP(資材所要量計算)など昔の生産管理システムでは、一晩かけて計算してようやく結果が出るということもありましたが、今は一瞬で結果が出ます。ですから、こうした最新の技術をうまく活用して、属人的ではない「仕組み」を作ることが非常に重要だと考えています。

もし人が頑張って調整しようとすると、先ほどお伝えしたようにブランドごとに担当者を置くことになります。ブランドごとの担当者が、製品企画から将来の需要予測、調達、在庫管理までを行うとなると、ブランドが10個あれば10人の担当者が関わることになります。それぞれの担当者が勝手に進めるわけにはいかないため、情報を集約するための会議が新たに必要になります。

また、ブランドごとに担当者が分かれていると、業務の進め方がそれぞれ属人化してしまい、会社としての標準化が進みません。これは担当者が交代する際に大きな問題となります。

さらに一番の問題は、先ほど「サプライチェーンマネジメントは意思決定である」とお伝えしましたが、その「判断基準が共有されない・共有が難しい」という点です。「なぜその需要計画を立てたのか」「なぜその在庫水準に設定したのか」という根拠が可視化・共有されないのです。その計画に妥当性があるのかどうか、組織として合意・判断されたものなのかどうかが分からない状態になってしまいます。このような状況では、経営層と現場の認識が噛み合いません。

だからこそ、「予測と在庫の共有基盤」を持つことが不可欠ではないかと考えています。そして、この基盤こそが本来のSCMシステムの役割となります。もちろんシステムを導入するだけでは不十分であり、この共有基盤を活用して効果的な会議体を設置し、運用していくことこそが非常に重要だと考えております。

SCM部門が中心となった「生販調整会議」の例をあげています。この会議に参加するのは、営業部門や生産部門の担当者だけではありません。「生販」とは言っても、営業と生産の調整に留まらず、事業を適切に最適化し、より良くしていくことが目的であるため、必ず事業部長にも参加しています。そして、最終的に事業部長が決裁を下すことが非常に重要です。

また、マーケティングや営業部門からの参加者も、現場の担当者というよりは、決裁権を持った方々です。こうした方々が参加し、売上や市場の状況を報告しながら「このくらい販売していく計画である」といった内容を協議します。一方で生産部門は、自社工場のキャパシティを考慮して生産可能かどうか、またサプライヤーからの納入が間に合うかどうかといった点について審議します。

では、SCM部門はこの会議で何をするのかと言いますと、議事進行や状況説明、会議の準備など、いわゆるピボット役としてのファシリテーションを担います。このような会議体を設けることが望ましいのですが、先ほどお伝えした「認識が噛み合わない」という事態を避けるためには、参加者全員が同じデータを見て、共通の認識を持つことが何よりも重要になります。

SCMシステム「PlanNEL」の紹介

それでは次に、弊社のSCMシステム「PlanNEL(プランネル)」を紹介したいと思います。「SCMシステムは、本当に自社に適用できるのか」「すぐに使えるものなのか」といった質問をよくいただきます。しかし、先ほどお伝えした通り、SCMの本質は「需要と供給の調整」です。この需給調整の業務において、会社独自の個性が求められるかというと、実はそれほど個性を必要としない領域であると考えています。

もちろん、サプライチェーンのネットワーク構造や拠点の場所、在庫の持ち方などは、それぞれの会社や事業、製品の特徴によって異なります。そのため、そうした独自の部分については、システム上にパラメーターやマスターデータとして持たせる必要があります。しかし、需給調整の業務そのものは、必ずしも会社ごとの個性を発揮すべき領域ではありません。

弊社が提供するSCMシステム「PlanNEL」は、SCM業務のベストプラクティスに基づき、標準的で効果的な業務の枠組みを提供しています。SaaSであるため、基本的には個社向けの専用カスタマイズを行うわけではありません。先ほどお伝えした通り、需要と供給を調整する業務自体に独自の個性は不要であり、特別なカスタマイズは必要ないと考えているためです。

「PlanNEL」は、カスタマイズを行わなくても、パラメーターやオプションの設定を選択することで柔軟に対応できるようになっています。例えば、データモデルを用いて自社のサプライチェーンネットワークをモデリングしたり、大まかなレベルでの生産能力をマスターデータとして持たせてシミュレーションしたりすることができます。

先ほどから「共有基盤」の重要性をお伝えしておりますが、共有基盤を作ること自体が目的になってはいけません。標準的なシステムを利用して、業務のやり方そのものを社内に定着させること、そしてその進め方について社内でしっかりと共有し、合意形成を図ることが何よりも必要です。

こうしたシステムを導入する際、システム導入そのものが目的化してしまうケースがよく見受けられます。しかし、私たちは単なる「SCMシステムの導入」を目的とした提案はあまり行っていません。当然ながらシステムは導入いただくわけですが、カスタマイズを前提とした導入は、多大な時間とコストがかかってしまうためです。そうして時間とコストをかけてしまうと、本来解決すべき課題への対応が後回しになってしまうケースがあります。そのため、私たちはこうした仕組みをSaaSとして、なるべく早くご利用いただけるような提供を始めました。

弊社のSCMシステム「PlanNEL」にどのような機能があるか、簡単に説明します。

まずは「基幹システムとの連携」です。計画を立てるためには、どうしても過去のデータが必要になります。お客様が基幹システムでお持ちの販売実績データやPOSデータなどを、まずは需要予測の機能に連携します。そして需要予測の機能では、過去の販売実績データを元に未来の需要をAIが計算します。

ただし、AIが計算した需要予測が必ずしも完全に当たるわけではありません。定番品のように常に一定量が売れてトレンドが見えるようなものは、AIの需要予測をそのまま使っても問題ないかと思います。しかし、たまにしか売れないような「間欠需要」と呼ばれるものや、過去から環境が変化するものについては注意が必要です。例えば新製品の発売や、キャンペーンを実施する場合など、AIはその新商品やキャンペーンの存在を事前に把握していないため、過去データだけでは予測できないのです。

そのため、AIの計算結果に対して、計画数を調整し、「人が意志入れ」を行う必要があり、これが「販売計画」になります。

次に、「どこにいくつ在庫を持つべきか」という基準を決めます。これが「在庫計画」です。在庫拠点が1箇所であれば、その拠点だけを見ればよいのですが、中央倉庫から地方倉庫へ在庫を移動させているようなケースでは、倉庫同士の依存関係が生じます。どこにどれだけ在庫を持っておくべきかは、各倉庫が担当するお客様の需要にも関係してきます。

その基準を決めることで、将来の需要計画や販売計画から、「どこにいくつ製品在庫を補充すべきか」という数字を計算できるようになります。ここでは「補充」という言葉を使っていますが、生産部門であれば「生産依頼」をかけることになりますし、調達部門であれば「購買依頼」をかけることになります。

そして最後に「需給計画」のステップにて、需要に対する供給可能性を計算します。これにより、生産能力を勘案した生産計画を立てることができます。「生産スケジューラーと何が違うのか」とよくご質問をいただきますが、もう少し大きな粒度、つまり「大日程計画」とお考えいただくと分かりやすいかと思います。

この需給計画が導き出す結果は、工場に対する生産依頼などになります。ここではただ闇雲に「これだけ作ってください」と依頼するのではなく、工場内のボトルネックとなる工程や重要な生産設備などを勘案してシミュレーションを行うことができます。そのため、いざ工場側で生産スケジューラーを使って詳細なスケジュールを立てようとした際に、「能力が足りず生産できない」といった事態が起きないよう、事前に大枠の計画を立てておく役割を果たします。

そして、こうした補充計画から算出された購買依頼データや発注依頼データなどを、基幹システムへ連携します。基幹システムに連携されることで、それが正式な生産依頼や発注依頼となります。

図の中では角が丸い四角形で色をつけて表していますが、「人が意志入れ」を行う工程は、正直なところ「販売計画」の部分だけなのです。ここさえしっかりと行えば、あとはPlanNELが自動的に計算してくれます。

次に、実際の業務イメージを説明します。この図はPlanNELが提供する画面のイメージですが、マーケティングや営業の担当者が需要計画を策定する際は、このような表形式の画面を使用します。

例えば、週ベースで計画を立てるイメージです。ある品目の販売計画を立てる際、まずはその品目の売上目標(金額)があります。そして、前年実績がどれくらいの販売数量だったかを確認します。また、「需要予測」の項目にはAIが予測した数値が表示されます。担当者はこれらの数値を見比べながら、「販売計画」である青色の部分に調整を加えていく、というのが主な業務となります。

例えば、マーケティング部門が「第3週にキャンペーンを実施する」といった場合には、その期間の計画数を少し多めに調整するといった対応を行います。また、対象となる品目の過去のトレンドを見て、上り調子なのか下がり調子なのかを確認します。これによって、将来の販売計画を多めに見積もるべきか、少なめにするべきかを判断します。

この図では、販売計画には需要予測とほぼ同じ数字が入っていますが、一般的にはAIが予測した需要数を初期値として設定しておきます。

もう一つ重要なポイントが、売上計画です。数量だけ、あるいは金額だけで評価することは、経営管理の観点からは不十分です。「どれだけの数量を販売し、いくらの売上になるのか」を数量と金額の両面から把握する必要があります。さらに、その品目の原価を正確に入力して利益率を把握しておけば、「利益率の高い品目だからこそ、販売数を増やして利益の最大化を図る」といった戦略的な判断も可能になります。

この図では表現しきれていませんが、こうしたデータをさまざまな軸で評価することも重要です。例えば、「アジア市場向けと欧州市場向けでどれくらい実績が違うのか」といった視点で分析することができます。もし「アジア向けをさらに強化したい」という方針があれば、過去の実績を踏まえつつ、将来の計画にその戦略を組み込んでいくことになります。

次に、調達部門の業務についてですが、調達部門は在庫基準を定めて調達計画を作成します。その際、在庫拠点ごとに適切な在庫基準、つまり「運用在庫+安全在庫」の水準を決定します。

これについても、一般的には固定的な在庫基準数を設定している企業が多いと思いますが、PlanNELでは、「サービスレベル」という欠品許容率や「運用在庫月数」などいくつかの指標を、拠点×品目別に事前に設定しておくことで、実際に確保すべき在庫数を自動的に算出することができます。その算出された基準と将来の需要をすり合わせることで、サプライヤーへの発注計画や工場への生産依頼計画を策定ができます。

少し補足しますと、倉庫が1箇所だけであれば管理はそれほど難しくありません。しかし、実際には倉庫が複数に分散しているケースが多くあります。そうした状況下では、例えばサプライヤーから中央倉庫に一括で製品を集め、それを各地方倉庫に分配する際、「どこにどれだけ分配すべきか」という課題が生じます。

よくあるケースとして、「3対7の割合で分配しよう」といったように、経験則で配分してしまうことがあります。しかし、もしその配分が外れて一方の在庫が不足した場合、倉庫間で在庫を移動させる「横持ち」が発生します。横持ちは非常に手間や輸送コストがかかります。これを防ぐためにも、在庫拠点ごとの適切な在庫基準をシステムで定め、それに基づいて供給を行うことが非常に重要になります。

次に「供給計画」についてです。これは主に生産統括部など、マネジメント寄りの生産関連部門が担当する業務です。例えば、ある部門から「工場Xに対してこれだけの生産をお願いしたい」と依頼が来たとします。その際、「それが工場で本当に生産可能なのか」を判断しなければなりません。工場の生産能力には現在の制約が必ず存在するため、その依頼に応えられるかどうかを見極める必要があります。

こうした計算を、手作業で行っていた担当者の方もいらっしゃると思います。しかし、工場の生産能力や大きな粒度での工程をシステム上でしっかりと定義し、計算させることで、データに基づいて供給可能性を判断・回答できるようになります。

次に、計画と実績を評価して課題に対応する業務についてです。これは事業部長に限らず、SCMの責任者の方も行っている業務かと思います。図にいくつかのダッシュボードやレポートのイメージを出しておりますが、例えば「将来どれくらいの需要があり、それに対してどれくらい供給可能なのか」を可視化する需給計画の分析レポートです。

需要に対して、すべて供給可能であれば問題ありませんが、「納期に間に合わず遅延してしまう」「供給量が不足している」といったアラートも、このレポートを通じて事前に分析・把握することが可能です。また、工場の立場で言いますと、資源の稼働率も重要になります。プロセス系の生産品である場合、やはり稼働率が非常に大事になりますので、稼働率が下がらないように平準化して生産を行うことも必要になります。

あとは損益の観点です。「本当に利益の出るものが売れているのか」という点を確認・評価することも求められます。したがって、事業が予定通りに進捗しているのかどうか、もし進んでいないとしたら何が問題なのか、そして今後どのようなことが起きそうかを予測しながら、計画と実績を対比して対策を検討します。ここが一番重要なポイントです。

本日のテーマである「経営や部門間で認識が噛み合わない」という課題に戻りますが、やはりこのようなデータを全員が同じように見て、共通の認識を持つことが何よりも大事です。それができていないと、「声の大きい人の意見がそのまま採用されてしまう」といったことが実際に起きてしまうようです。

営業部門の方は「売る」ことがミッションですから、どうしても「売れる機会があるのに在庫がない」という状態は避けたいと考えます。ですから、多めに生産依頼をかけたいと思うのが自然です。しかし、「本当にその生産依頼数が妥当なのか」ということを、こうした分析レポートを見て客観的に評価することが非常に重要になると考えています。

次に、システムの導入前と導入後の事例を一つご紹介します。

ある会社の事例ですが、経営層からは「在庫を減らせ」と指示されているものの、営業部門からは「欠品は絶対に避けたい」と反発され、問題が発生していました。営業部門の発言力が強かったため、「欠品は絶対にNGなので、調達部門には確実な手配をお願いしたい」と強く要求していました。それを受けた調達担当者は、「調達リードタイムが長いから、多めに発注しておこう」と過剰な発注を行っていました。

その際、この会社では在庫を「一律の考え方」で管理していました。つまり、「直近の出荷実績3ヶ月の平均値」をそのまま安全在庫として保持するというルールです。これは「3ヶ月移動平均」と呼ばれる手法で、決して間違った計算方法ではありませんし、ある程度は予測が当たるものです。しかし、需要の変化が早い環境下においては、必ずしもこの手法がうまく機能しないという現実があります。

また、「生産または調達リードタイムにバッファとして1ヶ月分を安全在庫として持つ」といった考え方をしているケースもあります。しかし、そうした基準が在庫や販売の最新トレンドに合わせてアップデートされていないことが問題になることがあります。大抵の場合、年に1回や半年に1回といった頻度でしか、基準の見直しが行われないため、在庫基準が固定化されてしまっていることが多いのが実情です。

その結果、急に需要が増えた際に対応が後手に回ってしまいます。さらに、製品ごとの利益率ではなく、出荷量だけに応じて在庫を配置していたため、利益率の低い在庫ばかりが多くなってしまう事態も発生し、業務効率の悪化と全体の利益率の低下を招いていました。

そこで、PlanNELを導入いただき、在庫基準を「サービス率」という考え方で設定するように変更しました。サービス率とは、例えば「サービス率95%」とした場合、100%ではなく「5%の確率で欠品が起きるかもしれない」という基準を意味します。

したがって、サービス率を引き上げれば上げるほど欠品はなくなりますが、その分、抱える在庫量は増えることになります。しかし、従来は「サービス率を上げると在庫がどれくらい増えるのか」「それを金額換算するといくらになるのか」「そもそも自社の能力で供給可能なのか」といった点が正確に把握できていませんでした。

PlanNELを活用し、サービス率の変更に応じて供給可能量がどのように変化するのかをシステムで正確に計算・シミュレーションできるようにしました。これにより、「欠品が心配だから在庫を持っておこう」といった感情論から脱却し、データに基づいた妥当な意思決定が可能になります。

ここに記載しているのは、この企業の部長様からいただいたコメントです。「PlanNELの導入により、納期遵守率をキープしたまま、在庫金額を34%削減することができた」という成果が出ています。具体的な取り組みの背景として、以前は5,000にも及ぶアイテムをわずか4人の担当者で管理されていました。アイテムごとにExcelを使って安全在庫量を計算していたため、残業しても業務が追いつかない状態だったそうです。

業務を効率化しようと全アイテムに一律の在庫基準を適用したこともありましたが、結果として品目によって在庫が多すぎたり少なすぎたりする問題が生じ、「本当にこのままで良いのか」と疑問を感じられていました。しかし、PlanNELを導入したことで、こうした課題を解決できるフレームワークが整い、経営層や現場への説明も論理的に行えるようになって、スムーズな運用が可能になったとのことです。その結果、担当者の業務負荷が下がり、より付加価値の高い業務に時間を割くことができるようになりました。

これまでは、製品企画の担当者が需給調整までExcelで行っていたため、本来の業務である「売るための企画」や「新製品の企画」に十分な時間を割けなかったのです。システム導入により、そうした状況から脱却し、本来の付加価値の高い業務へシフトすることができた例と言えます。

それでは、最後に本日のまとめをお伝えします。

経営層と現場の認識が「噛み合わない」のは、決して人間関係や個人の問題ではありません。単に「不確実性を扱う仕組み」が存在していなかっただけなのです。

SCMは経営と現場をつなぐ意思決定のOS」であると言うこともできます。中間管理職の方々は、これまで事業部と現場の板挟みになって苦労されていたかもしれませんが、それは明確な判断基準となる仕組みがなかったことが原因です。

そのため、「予測と在庫の最適化」を経営と現場の共通言語にすることを目指し、ぜひ仕組み作りに取り組んでいただくのが良いのではないかと考えております。

本日のセミナーは以上となりますが、もし追加でご質問やご興味がございましたら、いつでもお問い合わせください。

また、弊社では、SCMセミナーを月1回程度の頻度で開催しておりますので、ぜひまたご参加いただけたらと思います(セミナーの一覧はこちらから確認できます)。

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