欠品・過剰在庫をなくし、顧客の需要に対応する仕組み構築の始め方セミナー|SCMセミナーレポート

欠品・過剰在庫をなくし、顧客の需要に対応する仕組み構築の始め方

ザイオネックスでは、SaaS型SCMシステム「PlanNEL(プランネル)」とコンサルティングサービスの提供だけではなく、SCM(サプライチェーンマネジメント)に関連するセミナーも開催しております。今回は、2026年4月23日(木)に開催した「欠品・過剰在庫をなくし、顧客の需要に対応する仕組み構築の始め方セミナー 〜地政学や紛争、為替リスクなど、いつ起きるかわからない外部環境の変化に平常時から備える〜」のレポートを公開いたします。

中東情勢の緊迫化に伴う原油供給の危機懸念をはじめ、地政学リスクの顕在化や、急激な為替変動など、グローバル規模での外部環境の変化は、もはや「いつ起きてもおかしくない」常態化リスクとなりました。

このような予測困難な時代において、従来の延長線上にあるサプライチェーン管理では、突発的な需要変動や供給網の分断に対応しきれず、「致命的な欠品」や「キャッシュフローを圧迫する過剰在庫」を引き起こすリスクが高まっています。

有事に揺るがない強靭なサプライチェーンを構築するためには、危機が起きてから対処するのではなく、「平常時」から変化に柔軟に対応できる仕組みを整えておくことが不可欠です。

本セミナーでは、経営層やSCM部門・生産管理部門の責任者様に向けて、外部リスクに翻弄されることなく、顧客の需要に確実に応えながら在庫を最適化するための「仕組み構築のポイント」と、その具体的なアプローチをわかりやすく解説いたします。

地政学リスクと企業の対応

ザイオネックス 代表取締役 藤原:
本日は日常的なSCM業務がテーマではなく、現在大きな関心事となっている「地政学リスク」と、それに対する企業の対応について皆様と一緒に考えていきたいと思います。

連日の報道にある通り、ガソリン価格の高騰や石油関連製品の供給不足が深刻化しています。日本国内でもさまざまな影響が懸念されていますが、事態に対する反応は遅れているように感じられます。

この問題は、今年の2月28日に発生したイスラエルと米国によるイランへの攻撃から端を発しています。私はその10日後に出張で韓国のソウルへ行ったのですが、当時すでにソウル市内では通勤車両が減少していました。日本のテレビでは震災や野球の話題が中心でしたが、韓国の主要放送局では、連日イランへの攻撃に関するニュースで持ち切りでした。その際、私は日本の報道が非常に平和的であると感じると同時に、世界の動向に対する韓国の人々の反応の早さに驚かされました。

コロナ禍でも見られましたが、日本には「まず様子を見てから検討しよう」という慎重な空気が大半を占めています。今回のような有事の際には、石油代替燃料の開発などを急ぐべきだと考えられがちです。しかし、原油はプランクトンや藻類などの有機物が、地球上で数億年という長い時間をかけ、高温・高圧の特殊な条件下で自然に生成されたものです。人工的に全く同じものを生成することは技術的に可能であっても、膨大なコストがかかります。

したがって当面は、限りある地球の資源を効率よく分け合い、有効活用していく平和な世界の実現が何より重要ではないかと、最近強く感じております。

サプライチェーンリスクの分類

本日は「欠品・過剰をなくし、顧客の需要に対応する仕組み構築」というテーマでお話しいたしますが、本題に入る前に、まずは「サプライチェーンリスク」の分類をしました。

サプライチェーンリスクは、大きく2つに分類できると考えております。

1つ目は、事前の計画によって対応できるリスクです。これは自らコントロールが可能な領域と言えます。

具体的には、需要予測の誤差、在庫不足や過剰在庫、生産計画の不整合、調達リードタイムのばらつきなどがあげられます。これらは、過去のデータから予測できたり、経験に基づいて定義できたりするものです。さらに、数理計画の式やデータモデルを用いてしっかりとモデル化し、最適化アルゴリズムなどによって改善を図ることが可能です。

具体的には、「AIや統計学を活用した高度な需要予測」「在庫基準と調達計画の最適化」「生産スケジューリングの最適化」「最適な供給ネットワークの設計」などがあげられます。

このように、事前の計画で対応できるリスクは、一般的に「サプライチェーンプランニング(SCP)」の仕組みを活用することで、日々のオペレーションに組み込み、管理することが可能です。

そして2つ目が、本日のテーマにも深く関わる「回避不能なリスク」です。

これは事象そのものを自分たちでコントロールできないものです。例えば、自然災害やパンデミック、あるいは現在の地政学リスクによって生じる輸送ルートの麻痺などが該当します。この種のリスクは、事前対応が非常に困難です。特徴としては「非連続かつ非定型」であり、過去のデータが役に立ちません。こうした事態が起きれば、従来の需要予測も当たらなくなってしまいます。

こうした回避不能なリスクに対しては、「最適化」ではなく「備え」が最も重要であると私たちは考えています。具体的な「備え」の手段としては、主に以下があげられます。

  • 事業継続計画(BCP)の策定
  • デュアルソーシングの推進:代替不可能なサプライヤもいらっしゃるかと思いますが、単一拠点からの供給への依存は大きなリスクとなります。
  • 安全在庫の積み増し:最もシンプルかつ効果的な対策として、戦略的にバッファーとなる在庫を確保しておくことが重要です。
  • サプライチェーンの分散:これは単なる拠点の分散だけでなく、輸送ルートの分散も含めた考え方です。
  • 迅速な意思決定プロセスの確立

私が非常に重要だと考えているのが最後の「迅速な意思決定プロセスの確立」です。先ほど、日本企業は事態が起きた際に「まずはじっくり考えよう」という反応になりがちだとお伝えしました。しかし、時間をかけて考えるだけで、有事において本当に正しい意思決定ができるのでしょうか。考えるプロセスを支えるための、何らかの「武器」が必要不可欠だと私は考えております。

そこでまず、「リスクは検知できるのか、予見できるのか」という点について考えてみたいと思います。

実は以前、弊社では「サプライチェーンマネジメント研究会」という勉強会を開催しておりました。その際、グローバルリスク専門企業であるコントロール・リスクス社のプリンシパル、竹田博彦氏をお招きし、「サプライチェーンリスクは予見できるのか」というテーマでお話しいただいたことがあります。

その際の竹田氏の回答は、「予見することはできない。しかし、描くことはできるし、描くことに意味がある」というものでした。これは非常に示唆に富む素晴らしいメッセージだと感じています。そこで本日は、起こり得るリスク事象をどのように描き、どう対応していくべきかについてお話しいたします。

サプライチェーンリスクに対する事前の備え

事前の備えとして、私たちは「リスクシナリオ」「供給オプション」「What If シミュレーション」の3点が重要だと考えており、これら3つの要素について1つずつ説明していきます。

まずは、事前の備えの1つ目である「リスクシナリオ」についてです。

私たちはリスクシナリオを「サプライチェーンに影響するインシデント別の検討ストーリー」と定義しています。

具体的には、サプライチェーンの混乱を引き起こす可能性のある事象をリストアップした上で、想定される供給混乱の状態と、それに対する対策をあらかじめ「検討ストーリー」として準備しておくというアプローチです。

もちろん、実際にインシデントが発生した際には、対策会議などを設けてディスカッションをされるかと思います。しかし、「どういう場合に、どういう観点で議論するのか」を事前に準備しておけば、有事の際のディスカッションにかかる時間を大幅に短縮できるはずです。

例えば、サプライチェーンの混乱を引き起こす可能性のある事象を分類してみます。大きく「自然災害」「人為的・二次的災害」「ビジネス環境の急激な変化」などがあげられますが、特に3つ目の「ビジネス環境の急激な変化」は、突発的なインシデントというよりも、日常的に起こり得る可能性が非常に高い事象と言えます。

これらに限らずどのようなインシデントが存在するのかをリストアップし、発生時にどのように対応するのかという「方針」だけでもあらかじめ決めておくことが重要です。

私たちが提唱する「リスクシナリオ」とは、まさにこうした事態を想定したものです。例えば「サプライヤが被災した」というシナリオであれば、「特定のサプライヤからの供給が途絶える」という現象が起きるため、「サプライヤオプションの検討を行おう」といった具体的な対応に繋がります。

非常に基礎的・初歩的なことと思われるかもしれませんが、事前に準備をしているか否かで有事の対応スピードは劇的に変わります。そのため、こうしたリスクシナリオを平時からしっかりと準備しておくことが非常に有効だと考えております。

事前の備えの2つ目は「供給オプション」です。平時から、複数の輸送手段や物流会社、そして代替サプライヤとの関係を構築しておくことが非常に重要になります。

もちろん、商材によっては「このサプライヤでしか製造できない」というケースもあるかと思います。しかし、その唯一の供給元が機能しなくなる可能性はゼロとは言えません。さらに、自社と直接取引のある一次サプライヤだけでなく、その先の二次、三次サプライヤで問題が発生した場合も、当然ながら自社への供給は途絶えてしまいます。そのため、サプライチェーンの川上までしっかりと把握しておくことが重要です。

最近では、こうした二次、三次、さらには四次サプライヤの情報まで適切に管理し、インシデント発生時にアラートを出す仕組みも登場しています。弊社は株式会社レジリア様とコラボレーションをしており、同社が提供する「サプライチェーンリスク管理クラウド」を活用することで、複数階層にわたるサプライヤ情報の可視化が可能になります。ご興味のある方はぜひご覧ください。

いずれにせよ、可能な限りサプライヤの選択肢(デュアルソーシング)を確保し、「有事の際にはどのサプライヤを優先するか」といった優先順位を定めておくことが求められます。その際、単に第2、第3の代替サプライヤを決めておくだけでなく、できれば各社の「生産能力」「価格・原価」「調達リードタイム」「品質」などの情報もデータベース化しておくと、より実効性の高い備えとなります。

また、サプライヤだけでなく「輸送オプション」の確保も重要です。弊社のお客様でも、平時から船便と航空便のオプションを比較検討して輸送を行っている企業様がいます。例えば、今回のホルムズ海峡のように特定の輸送ルートが寸断された場合、そのルートを使用する運送会社や船会社にしか頼れない状態では、物流が完全にストップしてしまいます。現在起きている問題は輸送ルートの寸断だけに留まらずさらに深刻ですが、こうした事態に備えて「代替輸送オプション」を準備しておくことが、有事の際に企業を救う大きな助けとなると考えております。

事前の備えの3つ目は、「What Ifシミュレーション」です。

これは「想定した事象が発生した場合にどうなるのか」を検証する分析手法です。一般的には、プロジェクト管理やリスク管理において、想定されるリスクや例外事象が発生した際の状況を予測し、対策を立てるために用いられます。

先ほどご紹介した「リスクシナリオ」に基づく代替オプションの選定にあたり、供給リードタイムやコストなどを事前に計算し、インシデント発生時の迅速な実行・判断につなげるための方法を説明します。

シミュレーションの分かりやすい例として、製品機種が複数あり、それぞれ部品をタイと中国の複数ルートから調達しているケースを想定します。

そこで、「もし特定の部品Bを国内調達に切り替えたらどうなるか」といった代替オプションを検証する際に、What Ifシミュレーションを活用します。部品Bを国内調達に切り替えた場合、調達先のメーカーが変わるだけでなく、為替、調達価格、リードタイムなども連動して変化します。

例えば、中国から輸入する場合は国内調達よりも輸送リードタイムがかかります。価格については中国の方が安いかもしれませんが、為替変動によってはその優位性が逆転することも十分にあり得ます。

こうしたさまざまな調達パターンの条件を「代替案」としてそれぞれ名前をつけて保存・管理しておきます。その上で、各パターンを実行した場合にどのような結果になるかを事前にシミュレーションしておくのです。

具体的には、「顧客の納期に間に合うのか」「コストはどのように変動するのか」「(有事の際)復旧可能時期が判明した場合、その時期まで現状の対応を続けるとどうなるか」「寸断されたルートをそのまま放置した場合、工程がどの程度の期間停止してしまうのか」のような観点でシミュレーションを行います。

このように、さまざまな条件を組み合わせてシミュレーションを重ねておくことが、いざという時の迅速かつ正確な意思決定の「武器」となります。

もし、「このような条件を満たした場合にはこうする」といった方針が、ある程度の制約条件や「閾値」として決まっていたり、ルールが明確化されていたりする場合では、弊社でも提供しているような「AIエージェント」の活用も有効です。

AIを活用することで、設定した閾値の範囲内やルールに合致するものであれば、「この場合はこうする」という最適な解を自動的に導き出すことが可能です。最適化のアルゴリズムを利用するのも一つの方法ですが、最近ではこうしたAI技術も積極的に活用されています。

ここまで、「リスクシナリオ」「供給オプション」「What Ifシミュレーション」という3つの備えについてお話ししてきましたが、では実際にリスク事象が発生した際に、これらをどのように運用していくのかを説明します。

例えば、代替案の中で特定の調達先を選んだとします。その際、コストがいくらになるのか、リードタイムが何日になるのかを確認するとともに、各拠点の「負荷」についても考慮する必要があります。

ここで言う負荷とは、調達先が自社の子会社などで、生産負荷を把握できるようなケースを指します。特定の工場に生産を集中させてしまうと、当然ながら負荷は跳ね上がります。自社の工場でなくとも、調達先の工場の負荷を把握するデータが取得できる場合は、「もしそこに生産が集中したらどうなるか」をシミュレーションしておくことが重要です。

次に「コスト」についてです。昨今、急激な円安が進行しており、調達拠点によっては著しくコストが上昇しています。そのため、現在のコストだけでなく、「将来さらに円安が進んだ場合にどうなるか」という点も、シミュレーションの重要なテーマになります。

しかし、最も注視すべきはやはり「リードタイム」だと考えています。お客様からご依頼いただいた納期は何としても守らなければなりません。もちろん国内で調達できればリードタイムは短く済みますが、有事の際にこれまで取引のなかった新しい場所や、遠方の国から調達して輸送するとなった場合、そのリードタイムが本当に現実的なのかどうか、検証する必要があります。

これまでは「エイヤ」と感覚で決めていたような意思決定も、事前の備えを活用して数値的にシミュレーションを行い、そのデータをもとに社内で客観的な合意形成を図った上で調達先を決定する。そのような確実なアプローチが、今後のリスク対応において求められているのではないでしょうか。

ここでは、弊社の提供するシステムを活用した場合、「供給シミュレーション」が具体的にどのようなものになるのかを、もう少し詳しくご説明したいと思います。

まず、供給シミュレーションの業務が全体の中でどこに位置づけられるのかについて、図をご覧ください。これは、私たちが日頃からお見せしている「サプライチェーンマネジメントの業務範囲」を表した図です。

図の下段にある「実行系」の領域は、通常ERPや生産管理システムなどでカバーされている部分であり、日々の「実行/実績データ」が管理されている領域とお考えください。

一方、上段にあるのが、先ほどSCPとお伝えした「計画系」の領域で、弊社がシステムとして提供しているメインの領域です。大きく分けると「需要計画」と「供給計画」に分かれます。図の中であえて「個別計画」と記載している部分もありますが、これはサプライチェーン全体の計画というよりも、一つの工場内での計画や、個別のトラック輸送の手配といった、より現場寄りの計画を指しています。

そして、先ほどから申し上げているWhat Ifシミュレーションを実行するのが、「マスタープランニング(供給計画)」の仕組みになります。マスタープランニングは、弊社独自の機能というわけではなく、グローバルで展開されている一般的なSCPシステムであれば、標準的に備わっている機能です。

弊社システムの大きな特徴としてあげられるのは、「製造現場(工場内)の複雑な制約条件を数多く加味して計画できる」という点です。これが、他社にはない私たちの強みとなっています。

ここからは主に、弊社が提供する「マスタープランニング(供給計画)」についてお話しします。

マスタープランニング(供給計画)の役割と基準データ

弊社が提供するマスタープランニングは、在庫補充計画と連動して統合的な基準生産計画を立案できる仕組みになっています。名称は「生産計画」ですが、実際には生産だけでなく輸送の計画なども包括して立案することが可能です。

平時において、この仕組みをベースに全社の各工場の生産計画をはじめ、納入リードタイムの長い資材や部品の必要量算出、そして購買発注計画の策定などに広く活用されています。具体的なプロセスを少し解説いたします。

まず最初に、「今後どの程度の需要があるのか」という予測を立てます。その需要に対し、現在保有している在庫や安全在庫の基準などを勘案し、「今後どれだけ補充しなければならないか」「どれだけ生産依頼や調達を行わなければならないか」を導き出します。

次に新たな生産すべき量が決まると、それが「生産依頼」となります。その際、単に量を決めるだけでなく、「どの工場で、どの程度生産する必要があるのか」をシステムで計算します。

この計算を行うための元データとして、利用可能な在庫量や、生産オーダー、PO(入庫予定)などのデータが必要になります。これらの現状データは、おそらく皆様の企業でもERPなどで管理されているかと思います。

さらに重要となるのが「マスターデータ」の管理です。具体的には「生産能力(この工場の、このラインにはどの程度の生産能力があるのか」「輸送能力(航空便と船便で輸送能力や制約がどう変わるのか)」「部品表(完成品を作るために必要な部品の構成データ)」などの情報が含まれます。

部品表については、マスタープランニングの段階で全ての部品を細部まで管理するというよりは、供給のボトルネックとなり得る主要な部品に絞って管理していくのが一般的です。

さらに、サプライヤからの「輸送リードタイム」などの情報もそれぞれ保持し、供給ネットワーク全体をあらかじめ「マスター化」しておきます。また、工場の「操業カレンダー」も重要なマスターデータとなります。

これらを元に、受けた生産依頼数に対して「実際にどのくらい生産できるのか」を計算します。この時、求められる需要に対してどれだけの量を供給・回答できるかという「供給可能数」を算出します。これを「RTF(Return to Forecast)」と呼んだりしますが、需要のフォーキャストに対してどれだけ応えられるか、生産能力の有無、そしてコストはどの程度かかるのかといった点をシステム上で検証します。

弊社の「マスタープランニング」にはこのような仕組みが標準で備わっております。そのため、平時から単一の工場内にとどまらず、複数工場をまたがった計画や、輸送ルートも含めたサプライチェーン全体の供給計画を立案することが可能です。

このマスタープランニングの役割において、「制約の考慮」が最も重要な部分を占めます。そして、複雑な制約の中にも、当然ながら「優先順位」が存在します。

例えば、デマンド(需要)に対する優先度です。「複数のデマンドがある中で、何を優先して計画を立てるべきか」という基準であり、主に以下のような内容があります。

  • 納期の優先: 顧客が求める納期を最優先して計画を立てる手法
  • 収益性の優先: 利益率や収益性が高い製品・オーダーを優先する手法
  • デマンドタイプによる優先: 「緊急」「通常」「イレギュラー」といったオーダーの性質や重要度に基づいて優先順位を付与する手法
  • 例外オーダーの種類:テスト用の需要であったり、サンプル用であったり、あるいは受注残を満たすためのオーダーなど、さまざまなケースが存在します。

ここで重要なのは、各デマンドに対して「優先度」を明確に設定しておくことです。「何を優先するのか」をポリシーとしてあらかじめ定めておくことが、「戦略的な需要の優先順位」となります。

一方で、「供給の割り当てにおける優先度」も存在します。例えば、以下のような基準が考えられます。

  • 出荷リクエスト日順: 出荷指示が早い順に、優先的に供給を割り当てる手法
  • 顧客の優先度: デマンドの優先順位とも紐づきますが、自社にとって最も重要なお客様のオーダーから優先的に供給を割り当てていくという手法

優先順位の付け方はさまざまですが、これらはまさに各企業の「ポリシー」や「経営戦略」そのものです。システムが自動で判断してくれるものではなく、人間が明確な基準を設定しなければ決まりません。だからこそ、有事に備えて日頃からこうしたポリシーをしっかりと準備しておくことが非常に重要になります。

次に、供給元(工場)への割り当てについて、一つの例をあげます。

工場内には必ず「ボトルネック工程」があると思います。その工程で使われる「資源(設備など)」をどのように使うかが、実現可能な供給計画を立てる上で非常に重要な鍵を握ります。

少し細かい話になりますが、代替資源を利用して同じ作業を複数の資源で行える場合を想定してみましょう。例えば、材料(M1)をインプットして製品(A1)を製造する際、設備1と設備2の両方が使用可能だとします。この時、「どちらの設備を優先して使うべきか」という判断基準も事前に定めておく必要があります。

具体的には、以下のようなルール設定が考えられます。

  • 最速処理の優先: 最も早く処理が完了する資源(設備)を自動的に選択する。
  • 優先順位の固定: 複数台の代替設備がある場合、あらかじめ使用する資源に優先順位をつけておく。
  • 負荷の分散: 各資源の負荷状況に応じて、指定した比率で分配して使用する。

例えば、複数設備への負荷を「50:50」で均等に割り当てるという考え方や、利用可能なキャパシティの空きが最も早い資源を選択する(空いている設備から優先的に使う)といった方法があります。もしくは、週別や月別の負荷が平準化されるように割り当てるといったアプローチも考えられます。

このように、代替資源の選び方にはいくつものパターンが準備されています。特に重要な生産設備に関して「どのようなポリシーで運用するのか」を事前に決めておくことが、実効性の高い供給シミュレーションを行う上で非常に重要になってきます。

続いて、先ほどから少し触れている「供給ネットワーク」についてお話しします。サプライチェーンの計画を立てる際、最も重要になるのが、この「サプライチェーンネットワーク」です。そのため、我々がお客様とプロジェクトのお話をする際も、最初にこのネットワークの状況からヒアリングさせていただいております。

自社の単一工場だけで生産が完結するようなケースであればシンプルですが、通常はそうしたケースは稀です。国内工場もあれば海外工場もあり、さらには外注先も関わってきます。これに加えて、「DC(ディストリビューションセンター、在庫拠点)」も存在するため、製品をお客様にお届けするまでには、これらをつなぐ多種多様な供給ルートを経由することになります。

この複雑なネットワークをデータモデルとして正確に構築・管理し、システム上で「マスター化」しておくことが一つの大きな鍵となります。

そもそも、「このネットワークをどのような形に構築するのか」という設計自体が、SCPにおける戦略的要素として極めて重要です。海外から輸入するのか国内調達にするのかといった選択はもちろんのこと、「在庫拠点をどこに配置するのか」という意思決定も重要になります。例えば、日本国内であれば「西日本と東日本にそれぞれ配置する」という戦略もあれば、「日本の中央付近に大型拠点を1つだけ配置する」という戦略もあるでしょう。このネットワークの設計自体も非常に重要なアジェンダになります。

弊社システムでは、このような供給ネットワークを「FLOモデル」と呼び、システム上でモデリングし、保存・管理しています。

図の例を説明しますと、青い三角を「半製品」や「製品」、赤い三角を「原材料」とします。赤い線で示されているように、まず原材料を使って素材を生産し、そこで作られた半製品を輸送します。その後、国内の拠点で加工を行い、完成した製品がさらに輸送されてDCに入庫・保管されます。そして最終的に、お客様からの納期に合わせて配送していく、といった一連の流れです。

弊社のシステムでは、こうした複雑なネットワークの構造を正確にモデル化し、マスターデータとして一元管理することが可能になっています。

ここまでは、リスクに備えるためのマスタープランニングについての説明です。

最後に、弊社のシステムをご利用いただいているユーザー企業の事例をご紹介します。私はインシデントなどの危機が起きるたびに、ブラザー工業の元社長で、現在は会長を務められている小池氏の言葉を思い出します。

ちょうど新型コロナウイルスの感染が拡大していた時期にWebサイトに掲載された記事での内容なのですが、ブラザー工業様では以前からサプライチェーンの仕組みをしっかりと整備されていました。毎週のようにPOSから集計されたデータを確認し、「想定通りに売れているのか」「生産過多になっていないか、あるいは増産が必要ないか」を細かくチェックしながら販売生産計画を立案し、サプライチェーンを回してきたそうです。

現在も米国の売掛金や在庫管理のデータを欠かさずに確認し、最適な意思決定を行っているとのことでした。「何かが起きた時に慌てて対策をする」のではなく、日常から常に数値をモニタリングし、計画を見直すサイクルを回していらっしゃるのです。

この事例からも分かるように、「危機への備え」において最も重要なのは、まさにこうした日常のオペレーションがしっかりと「仕組み化」されていることなのだと、改めて強く感じております。

このように、日常的なオペレーションをしっかりと仕組み化することで、危機を乗り越えている企業様もいらっしゃいます。本日は有事に備えた「危機管理」のお話が中心となりましたが、日常のオペレーション基盤が全くない状態で、突発的な事態が起きた時だけ急に対応しようとしても、それは非常に困難です。だからこそ、平時からSCPの仕組みをしっかりと構築しておくことが極めて重要であると考えております。

弊社の親会社のある韓国企業では、「サプライチェーンの仕組みをシステムとして備えることは当たり前」という認識が広く浸透しています。

その背景として、韓国は国内需要が限られており、輸出によって経済が成り立っているという事情があります。「何を作るか」はもちろん重要ですが、サプライチェーンの管理体制そのものが企業の収益に直結し、極めて大きな影響を及ぼします。そのため、現地の経営層にとっては「SCPの仕組みなしで、日々のオペレーションを行うことなど考えられない」というのが常識となっています。

一方で、日本の現状を省みると、システム化の面では比較的のんびりとした空気があり、SCPの仕組みが整備されていなくとも「現場の人の頑張り」で何とか乗り切ろうとするケースも少なくありません。しかし、これからの時代は本当に何が起こるか予測できません。

有事に対する危機管理として、日頃からデータを正しく蓄積・活用し、いつでも迅速な意思決定やシミュレーションができる仕組みを準備しておくことが、これからの企業経営において必要不可欠ではないでしょうか。

本日のセミナーは以上となりますが、もし追加でご質問やご興味がございましたら、いつでもお問い合わせください。

また、弊社では、SCMセミナーを月1回程度の頻度で開催しておりますので、ぜひまたご参加いただけたらと思います(セミナーの一覧はこちらから確認できます)。本日は誠にありがとうございました。

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