2026.04.10

攻めのSCM組織づくりセミナー 〜SCMで組織を変える・経営を変える〜|SCMセミナーレポート

攻めのSCM組織づくりセミナー 〜SCMで組織を変える・経営を変える〜

ザイオネックスでは、SaaS型SCMシステム「PlanNEL(プランネル)」とコンサルティングサービスの提供だけではなく、SCM(サプライチェーンマネジメント)に関連するセミナーも開催しております。今回は、2026年3月26日(木)に開催した「攻めのSCM組織づくりセミナー 〜SCMで組織を変える・経営を変える〜」のレポートを公開いたします。

2026年4月1日の「改正物流効率化法」施行され、デジタル技術を活用した業務改革(DX)や、持続可能な供給体制の構築への関心が一段と高まっています。

その解決策として、物流にとどまらずサプライチェーン全体を牽引するCSCO(Chief Supply Chain Officer)やCLO(Chief Logistics Officer)の設置を検討される企業も多いのではないでしょうか。

そこで本セミナーでは、組織と役割の観点からSCMを見直し、”経営変革の実現手段”としてSCMを位置付けるアプローチをお伝えいたします。

ザイオネックス 代表取締役 藤原:
本日は日本企業の一般的な課題から、改めて「組織」という点に焦点を当てて、SCMについて考えてみたいと思います。

お話ししたい日本企業の課題として、一般的に以下の4点があげられます。
・供給重視・欠品回避による在庫の膨張
・物流とロジスティクス機能の未分化
・縦割り組織によるKPIの分断と全体最適の阻害
・グローバルでの統合的な本社機能・標準化の弱さ
本日は特に、3番の縦割り組織4番の標準化の弱さに焦点を当ててお話しします。

日本企業はなぜSCMが苦手なのか?

弊社が多くのお客様とお会いする中で、一般的に欧米企業と比較して日本のSCM機能は弱いのではないかと感じることがあります。

むしろ、韓国や中国といった国々の企業の方が、SCMを熱心に学んでいる側面があります。これは、まだ「品質の良い製品を出す」という点だけでは勝負しきれないため、そうしたオペレーションの力で勝とうとする企業が多いからかもしれません。

なぜ日本企業はSCM機能が弱いのか。その理由を考えてみますと、逆に日本企業の強みである「個人の能力の高さ」に要因があると考えられます。

日本企業は現場人材の教育水準が非常に高く、それを生かした組織設計になっているため、現場のオペレーションが非常に強力です。

現場の人材は皆しっかりとした教育を受けており、個々人が持つバックグラウンドに大きな偏りや違いがありません。そのため、現場内での暗黙知の共有がある程度自然にできていると言えます。

また、高学歴であることも特徴です。海外の製造工場などを見てみますと、実際の現場で大卒の従業員が働いているケースは少なかったりします。しかし、日本の工場や実際の業務現場では、高学歴な方も多く、全体的な教育レベルが高い傾向にあります。

こうした背景から、一つの業務に特化するのではなく「多能工化」が進んでおり、ジョブローテーションも容易です。このような優秀な人材が従事している現状を踏まえて、組織設計がされています。

現場に裁量を与えることで、「改善しなさい」とわざわざ指示を出さずとも、改善活動がすでに仕事の一部として定着しています。また、製造現場によくある「なぜなぜ分析」のような、問題解決のための教育訓練も浸透しています。

このように「現場が強い」ということは、全体を統制するシステムや仕組みがなくても、現場の個別の自助努力で何とかなってしまうことを意味します。作れば売れる時代には、このアプローチが十分に通用していました。

一方で、欧米企業や発展途上国の企業では、個々人の能力に依存しなくても成立するような組織設計になっています。海外の現場は文化背景の異なる移民で構成されていることも多く、明確な指示がなければ動くことができません。

日本は島国であり、同質性が高いため、「同じようなことを同じように理解する」傾向にあります。全く違う概念で物事を理解するといった食い違いは、比較的少ないと言えるでしょう。これまでは、全体を統制する仕組みがなくても現場の力で何とかなっていましたが、多様な文化や背景を持つ人々が働く環境では状況が異なります。

海外では「現場は作業に専念し、高学歴な人材は管理職に就く」といった考え方があり、現場での専門分業が進んでいる場合は、標準手順に従わせたり、改善活動は作業とは切り離して考えたりと、日々の作業に直結しないことは現場には与えません。そのため、指示通りに動く作業者を束ね、全体を統制するための「マネジメントの仕組み」が不可欠になります。

SCMにおいて本当に必要な要素とは、こうした現場間・部門間で発生するコンフリクト(利害対立)を調整し、俯瞰的かつ統合的にマネジメントする能力です。

日本企業が持つ強みである「個々人の高い能力」に、この「統合マネジメント」を掛け合わせてうまくオペレーションを回すことができれば、日本企業はさらに強くなれる可能性を秘めていると私は考えています。

企業内のSCMに必要な要素

例えば、社内では次のようなコンフリクトが日常的に発生しています。

・営業部門: 「欠品は絶対に避けたい」と考え、増産を要求する。
・生産部門: 「急な増産は対応できない」「計画通りに稼働させたい」と考える。
・調達部門: 「部品の最低発注数量を下げると単価が上がり、原価低減ができない」という理由から、なるべく大きなロットで発注したいと考える。
・事業部長: 「B/S(貸借対照表)の数値を良くするために在庫を圧縮したい」「過剰資産を抑えたい」と考える。

このように複雑に絡み合うコンフリクトを調整し、全体最適を図るための統合的なマネジメントがSCM部門には求められます。たとえ現場の個々の人材が非常に優秀であったとしても、それだけでは解決できない問題なのです。

したがって、全体をまとめる「統合的な管理人材」の育成に加えて、部門間のデータ連携、状況の可視化、そしてシミュレーションが可能となるような「システム・仕組み」の構築が必要不可欠であると考えています。

SCMを「機能」から「経営の仕組み」へ昇格させよ

ここからが本題となりますが、これまでSCMというと、PSI(生販在)管理や調達数の調整など、どちらかというと「現場の機能」の方に目が向きがちだったかもしれません。

しかし、SCMの本質は「需要と供給のバランス管理」です。このバランスが崩れると、企業の収益に大きな悪影響を及ぼします。SCMを単なる現場の機能に留めず、「経営の仕組み」へと昇格させる意識を持つことが必要です。

本日は、SCMを経営の仕組みへ昇格させるための考え方の要素として、6つの提言を用意しました。1つずつ順を追ってご説明していきたいと思います。

SCM組織を調整薬ではなく意思決定主体にする

私たちがよく使用している「SCM業務とその組織」を表した図です。

一番下のグレーの部分である「実行系」は、皆さんが普段の業務として取り組まれている領域です。この業務については、多くの企業様がすでに導入されているERPや基幹システム、生産管理システムなどでカバーされていると思います。

そして、図の点線から上にある「計画系」と「評価」の領域こそが、人の能力が最大限に発揮される部分です。

現場の「実行」は、日々短いタイムスパンで行う業務であり、それを確実に遂行していくことが求められます。一方で、物事を実行に移すためにはきちんとした「計画」が必要です。

経営者の視点に立つと、先が見えないまま物事を進めることは非常に不安なはずです。経営層は常に「将来自分たちの事業がどうなるのか」「予定通りにビジネスが進むのか」という点に強い関心を寄せています。だからこそ、経営に安心感を与え、事業の先行きを見通すための「計画」が非常に重要な意味を持ちます。

図の中にはSCM組織の役割として「調整役」と書かれていますが、これからのSCMは単なる調整役に留まってはいけません。

もちろん、部門間の調整も必須の業務です。しかし、最終的には経営層の「意思決定を促す組織」へと進化しなければならないと考えています。

SCM組織を調整薬ではなく意思決定主体にする

SCMの文脈では、最近よく「需要予測」が取り上げられます。確かに需要予測は非常に大事です。近年はAIを活用した需要予測も可能になり、予測精度は大きく向上しました。以前に比べると、手軽に需要予測を試せる環境が整ってきています。

そのため、「精度の高い需要予測さえできれば何とかなる」とお考えの方も非常に多いです。しかし、それだけでは不十分です。なぜなら、需要予測はあくまで「予測」であり、対象となるのは「不確実な未来」だからです。

SCMは、この不確実な未来に対して「自社の供給能力をどうするのか」を意思決定する仕組みです。したがって、予測精度を上げるだけでなく、「予測はブレるものである」という前提に立ち、全体を最適化することが求められます。そこで重要になるのが「正しい意思決定」です。

SCM組織を調整役ではなく意思決定主体にする

先ほど「SCM組織を単なる調整役ではなく、意思決定の主体にするべきだ」とお伝えいたしましたが、これを実践する場として代表的なものが「S&OP会議」や「生販調整会議」です。もし社内に明確なSCM部門が存在しなくても、こうした役割自体は必ず必要になります。

一つの例ですが、SCM担当者がピボット役(軸)となり、事業の経営・運営を担う「事業部長」、需要を創り出す「マーケティング・営業部門」、そして供給を担う「製造・購買部門」をうまく繋いで調整を行います。

マーケティング・営業部門は、市場や自社製品の状況を見極め、「これからどれだけ売れるのか、売っていきたいのか」という未来の「需要計画」を描きます。

その需要計画を受けて、製造・購買部門は、「現在の製造能力のままで対応できるのか、あるいは引き上げるべきか」を検討し、部品の調達や製造の計画を立てます。

事業部長は、「今後の売上は予定通りに進むか」「現在の需給バランスで問題ないか」を常に気に掛けます。そして、各部門からの情報をもとに、「この需要計画に対して、これだけの生産能力を確保する」という最終的な意思決定を行います。

このようにS&OP会議は、さまざまな部署のメンバーが「需給の最適化」という同じテーマについて議論し、事業の方向性を決定する場です。SCM組織の担当者が調整役やファシリテーターを務めるケースもあるかもしれませんが、S&OP会議を正しく機能させることが、会社の経営において非常に重要な鍵となるのです。

KPIを部分最適から資本効率に統合せよ

次に、SCMを経営の仕組みに昇格させるために必要なもう一つの要素が「KPI」です。ここでは、部分的な目標達成ではなく「全体の価値創出」へと視点を引き上げなくてはなりません。

企業には現場、事業運営、経営といった縦の「階層」があり、同時に横の「部門」も存在します。それぞれの階層や部門では、目標となる独自のKPIを持っています。しかし、このKPIがそれぞれ異なるため、社内でコンフリクトが生じる場合があります。

例えば、現場も製造部門は、 設備の「稼働率」を上げ「欠品率」を下げたいと考えます。しかし、欠品を防ぐためにどんどん生産すると、売れ残った際に在庫回転率が下がり、過剰在庫を引き起こすリスクがあります。

営業部門は、「売上を最大化したい」「欠品による販売機会ロスを避けたい」と考えるため、結果として多量の在庫を抱えようとする傾向にあります。

経営層は、キャッシュフローやROIを重視するため、「もっと売上を伸ばしなさい」と要求します。しかし、それに対して現場の稼働率や生産能力が本当に追いつくのかは不透明であり、ここでもコンフリクトが起きます。

このように、組織の縦の階層や横の部門ごとに、設定されているKPIや見ている時間軸は異なります。個別のKPIが存在すること自体は問題ありませんが、部分的なKPIを達成するだけでは不十分であり、最終的には「全体の価値をどう創出するか」を考えなければなりません。

KPIを部分最適から資本効率に統合せよ

そこで重要になるのが、「もしこうなったら、どうなるのか?」という思考法です。SCMの用語では、これを「What If Simulation」と呼びます。

例えば、「もし注文が2倍になったらどうなるか」「もし調達リードタイムが2倍に延びたらどうなるか」「もし倉庫の容量が半分しかなかったらどうなるか」など、実際のビジネスにはさまざまな制約条件があります。こうした制約の中で全体最適を導き出すためのシミュレーションが非常に重要です。

図の例は、「注文の変更により、Week 0(今週)からWeek 1(来週)の供給計画期間に反映する際、後ろ倒しになる他の注文計画への迅速な影響分析を通じて生産計画を調整する」といったケースです。他にも、「同じ納期だとして、どのお客様からの注文を優先して製造するのか」といった優先順位が変わることもあります。

このように、「もしこうなったらどうなるのか」という条件をシミュレーションしていくわけですが、現実的にこれを手作業で行うのは非常に困難です。

そこで、一つの例としてお見せしているのが、SCMシステム「PlanNEL」を活用したシミュレーション画面です。

シミュレーションを行う際、変数を変えたパターンのことを「シナリオ」と呼びます。図の例では、パラメーターを変更した「3つのシナリオ」でシミュレーションを行い、その結果を並べて表示しています。

PlanNELの「在庫計画」というモジュールを使用すると、例えば「欠品許容度などのサービスレベルを変えると、目標在庫金額がどのように変化するのか」といった結果を可視化し、比較することができます。

このように、部分的なKPIではなく「全体にとって最も価値のある選択はどれか」を決定するためには、システムによるシミュレーション機能が必要不可欠であると考えています。

KPIを部分最適から資本効率に統合せよ

この図は、各業務における「KPI」をどのように設定すべきかという例を示しています。全体最適を目指す上で、何を最も重視し、何をKPIとして設定するかが問われます。

例えば、「納期の対応力を強化する」という「販売力指数」の目標があったとします。これを要素分解すると、「納期の遵守率」「供給リードタイム」「販売計画精度」などに分けられます。その中で、「今回は納期の遵守率を一番重視して計画を立ててみよう」と設定してシミュレーションを行うのが、一つのシナリオとなるわけです。

また、生産領域においても同様のことが言えます。供給能力を最大化しようとする際、生産力指標が1つの基準となります。要するに「供給計画をどの程度充足できるのか」が問われます。これは「フルフィルメントレート(要求への対応力)」などと呼ばれたりもしますが、こうした指標も非常に重要です。

つまり、現場の部分的なKPIと全体のKPIはすべて密接に関連しているのです。これらを総合的に考えた上で、「どのKPIを一番重視して実行すべきか」をシミュレーションし、最適な計画をリリースしていくことが求められます。

グローバル標準化×ローカル対応の設計原則を持て

次にお話ししたいのが、「グローバルの標準化とローカル適用」についてです。

お客様と対話していると「うちの会社は特殊だから、一般的なSCMの型には当てはまらないんです」とおっしゃる企業様もいらっしゃいます。

確かに、個別に見れば特殊な事情はありますし、そこが自社の「競争の源泉」になっている場合もあるため、その強みは大切にしなければなりません。

しかし、SCMという観点では、日本国内だけでなく海外ともやり取りをしなければならないのが現状です。工場も販売拠点も海外にある中で、日本だけでビジネスが完結するケースは近年ほとんどなく、縮小する国内マーケットから海外へと販売の軸足を移す企業が増えています。

そのような状況下で、日本独自の基準だけでオペレーションを回そうとすると、海外のスタッフがついていけないという事態が発生します。

そこで「グローバルで標準化しましょう」と提案すると、「業務のすべてを標準化することなどできない」と反論されることもあります。もちろん細部まですべてを統一する必要はありませんが、「大きな粒度」で同じ考え方を共有することが非常に重要だと考えています。

特に、全社の基準となる「マスターデータ」が全く異なる考え方で作られていると、非常に困った事態に陥ります。海外の各社・拠点ごとに全く別のシステムが導入されていると、品目コードの付け方や、カテゴリーの括り方などがバラバラになってしまうことがあります。基準となるデータが揃っていなければ、グローバル全体での正確な評価や状況把握は非常に困難になってしまいます。

グローバル展開において、まずは「プロセス」をグローバル標準にすることが重要です。S&OPや供給計画、需給計画といったものは、「大きな考え方」としてグローバルで共通に持つべきだと思います。次に「データ」に関しても、できれば単一のデータモデルでマスター統合されるのが一番理想的です。

そして3つ目に「全体の意思決定」の統一があります。実は、ここが日本企業において少し弱い部分でもあります。海外の販社は、元々は代理店などのチャネルやパートナー企業であったケースも少なくなく、本社側が急に「自分たちの言う通りに従いなさい」とコントロールするのが難しいという現実があります。

しかし、グループ全体を良くしていくためには、やはり本社が強いリーダーシップを持ってリードしていくことが不可欠です。これは仕組みというよりもマインドや方針に関わる話ですので、本社主導の体制へとシフトさせていくための様々な施策を打っていく必要があります。

以前、ある企業様で伺ったお話です。その企業様でも、海外の販社は元々パートナー企業であり、販売チャネルの一つでした。どちらかというと、そのパートナーから「受注」をもらって日本側が製品を供給する立場だったため、関係性としてはお客様のようなものでした。

その後、そのパートナー企業を買収して自社の一組織にしたものの、「なかなか本社の言うことを聞いてくれない」という課題を抱えていらっしゃいました。

「そのようなケースではどう対応されたのですか?」とお聞きしたところ、「現地の社長に退職金をお支払いして退任していただき、日本から送り込んだ人材に社長を交代させました」とのことです。それも本社主導の体制を構築するための一つの有効な手段なのかもしれません。

このように、プロセスやデータ、そして意思決定のポリシーやルールといったものは、「大きな粒度」においてグローバルで標準・共通であるべきです。しかし例外として、「現地に裁量を残す」ということも同時に非常に重要だと考えています。

グローバルにおいては「グローバルプロセスオーナー」のような責任者を設置し、本社主導で推進・管理する部分と、実際の「実行」の裁量を各国に位置づける部分を切り分ける、という考え方が有効です。

この「標準化と独自の考え方」に関するテーマは、今年の1月に開催した「ワンプラットフォーム統合は本当に正解か?」というセミナーでも詳しくお話しさせていただきました。その際にお見せした資料の一部では、「企業内で標準であるべき要素」と「独自であってもよい要素」をリストアップしてご紹介しています。お時間とご興味がございましたら、過去のセミナーレポートをご覧いただければと思います。

グローバル標準化×ローカル対応の設計原則を持て

次に、「グローバル標準」とお伝えしましたが、もちろん「その会社独自の標準」というものも存在します。ただし、一番のベースとなるのは「SCMの考え方そのもの」です。

SCMにおける標準とは何なのかを定義することは非常に重要です。なぜなら、昨今はM&Aなどで会社が統合されたり切り離されたりすることが頻繁に起きていますが、その際にSCMに対する根本的な考え方が全く異なっていると、会社の統合自体が非常に困難になってしまうからです。世の中で企業再編が多く起きている中で、サプライチェーンの考え方がバラバラでは困ってしまいます。

そこでご紹介したいのが、ASCM(Association for Supply Chain Management)という団体です。SCMの標準的な枠組み、教育、資格などを提供している世界的な団体です。さまざまな国の人々が全く違う考え方で仕事をしていては混乱を招くため、この団体が「SCMの世界標準」を策定しています。

これは、個々の細かなシステムを標準化しようというわけではなく、あくまで「考え方」を標準化するものです。用語の定義や基本概念といったものを、標準的な知識として教育しています。

世界標準のSCMを学ぶには

日本でこのグローバル標準を学ぼうとした場合、APICSの日本のWebサイトなどからSCMの国際資格を取得することができます。この国際資格を持っているということは、世界標準のSCMの知識体系を習得していることの証明になります。そのため、海外のSCM担当者と実務のコミュニケーションを取る上でも非常に有用です。

また、「SCMの辞書」も非常に役立つはずです。SCMの用語には分かりづらいものも多々ありますが、元々はアメリカから来た概念であるため、それを日本語で解説している辞書です。日本語でしっかりと解説されているものは現状これくらいかと思いますので、ぜひ一度ご覧いただければと思います。

もう一つ、初の日本語による単行本「基礎から学べる!世界標準のSCM教本」もございます。こちらは深く細かな専門書というよりは、「世界標準のSCMとはこういう考え方である」という概念をコンパクトに整理した内容になっています。ご興味があればお手に取ってみてください。

プロセス→データ→DXの順序を厳守せよ

次に、非常に重要なポイントをお話しします。SCMを改善するために「ITシステムを導入して何とかしよう」とお考えの企業様は非常に多いです。

システム化自体は決して間違っていませんし、DXと呼ぶケースも多いでしょう。しかし、「システムさえ導入すれば解決する」という考え方はやはり誤りだと思います。まずは、「現状の業務をどのように行っているのか?」を問い直す必要があります。

例えば、「需要計画を作っていますか?」とお聞きした際に、「作っていません」と答える会社もあるかもしれません。あるいは、「営業の作る需要計画は当たらないから、製造現場が独自に出荷見込みを読んで生産している」とおっしゃる企業様もいらっしゃいます。

しかし、「本当にそのやり方で上手くいくのか?」という根本的な部分を見直した上で、まずは業務プロセスを標準化することが必要です。そして、先ほどお伝えした「データの統合」も不可欠です。各ローカル拠点で使っているデータが全く違う状態のままでは、システムを導入してもうまく機能しません。「ERPを導入すればいい」「SCMシステムさえ導入すれば何とかなる」という考えは危険です。

従来からプロセスが整っていれば問題ありませんが、標準化が不十分であったり、状況がうまく可視化されていなかったりする場合には、まず「組織のあり方も含めた業務プロセス」からしっかりとアプローチすべきです。業務プロセスを整えた上で、それを支える「IT」を考えるという順番が非常に重要であると考えています。

物流部から経営ロジスティクスへ再定義せよ

次に「物流部から経営ロジスティクスへ再定義せよ」と記載していますが、従来のように物流部がそのままSCMを担っている会社もあると思います。

組織の名前自体は問題ではありませんが、本当に重要なのは「そこでどのような役割を果たすのか」ということです。そこにいる人材が、ただ目の前の作業だけをこなす状態になってしまうと、将来の計画や予測はうまくいかず、経営的な目線も抜け落ちてしまいます。

現場の管理という考え方だけでは、SCMを機能させるのは困難です。仮にロジスティクス部門がSCMを担う場合であっても、そこには「データと経営的な思考を持てる人材」を配置することが重要です。

つまり、倉庫の状況を見るだけでなく、「需給はどうあるべきか」「在庫はどのように持つのが正しいのか」「これで本当にキャッシュフローは大丈夫か」「利益は出るのか」といった、お金の観点からも正しく評価できる人材が必要不可欠です。

組織構造は中央集権 vs 分散のハイブリッドへ

最後に、組織構造についてお話しします。先ほど「グローバルでは標準化を、ローカルでは独自のルールを使ってもよい」とお話ししましたが、これはすなわち「中央集権とローカル」という組織構造のバランスを意味します。

基本となる全体の方針や仕組みは、本社の事業部門やSCM専門組織がしっかりと握ります。その上で、国内法人、中国法人、米国法人といった海外の各拠点においては、それぞれのマーケットや環境に応じた「実行プロセス」や「ルール」を構築しても構いません。ただしその場合でも、「必ず本社が決めたマネジメントの仕組みやルールに従うこと」が絶対条件となります。

有効な中央集権体制を築くために一番大切なのは、グローバル全体で「共通の考え方を持つこと」です。考え方の土台を揃えた上で、それぞれの市場における違いはローカル側で実行していくのがベストなあり方です。

SCMワークショップの薦め

本日は、「このようなSCM組織を作っていきましょう」というテーマでお話ししてきました。ここからは、私たちが実際に企業のお客様と一緒に取り組んでいる支援内容の一つをご紹介したいと思います。

さまざまな組織に多様な考え方を持つ方々がいることが、全体最適を図る上で一番の障害になっていると私たちは感じています。そこで、オススメしているのが「ワークショップ」の開催です。つまり、SCMの組織作りを、関係者が一堂に会するワークショップを通じて進めていきましょうという提案です。

ワークショップの目的-課題・実現イメージの共有

ワークショップの目的は、まず「現状の問題やその原因を共有すること」です。例えば、営業部門と製造部門の間で常にコンフリクトが起きているとします。しかし、お互いの部門がどのような課題や問題を抱えているのかを共有し、理解し合うことができれば、同じ目標に向かって解決策を共に考えられるようになります。

まずは課題を共有し、それを解決するためにはどうしていくべきかを話し合います。そして、解決策の実現に向けて「どのようなITシステムを持つべきか」という合意形成を図ります。その上で、本当にシステムによる仕組みが必要なのかどうかを検討しなければなりません。

もし、関係者の認識がバラバラな状態のまま、トップダウンで「SCMシステムを導入しよう」と決定したとしても、現場からは必ず反対の声があがります。

「そんな仕組みがうまくいくわけがない」「営業に需要計画など作れない」「導入する意義が分からないし、自分たちにはやるインセンティブ(動機)がない」といった具合に、反発が生まれてしまいます。

だからこそ、ワークショップを通じて「新しい業務プロセスをどうしていくべきか」「システムが実現したらどのような未来になるのか」という具体的なイメージを関係者全員で共有することが非常に重要なのです。

ワークショップの目的-アプローチ

具体的なアプローチとして、まずは関係者が集まって話し合う場を設け、「課題の整理」を行います。

最初はブレインストーミングやKJ法などを活用し、自分たちの抱える問題を大きな模造紙などに貼り出してグループ分けしていきます。そうすると、全く別の組織や他の部署であっても、実は共通の悩みを抱えていることに気づくかもしれません。こうしたプロセスを通じて、課題をしっかりと共有し合うことが大切です。

もちろん、課題整理の手法として、私たちが各部署を個別に回って「皆さんの課題は何ですか?」とヒアリングしていくのも一つの方法ではあります。しかし、各部署を個別に回るだけでは、他の組織がどのような課題を抱えているのかをリアルに共有することが難しく、当事者としての「実感」がなかなか湧きません。だからこそ、関係者全員がひとつの場に集まってワークショップを行うことが非常に有用だと考えています。

皆で集まってお互いの課題を出し合い、それが何によって引き起こされているのか原因を整理した上で、「では、このように解決していきませんか」と解決策を共に考えます。

解決の方向性が見えたら、次は実行の順番を決めていきます。一気にすべての問題を解決するのは困難ですので、「いつまでに、どのような状態にしておきたいのか」という目標を設定します。その際、誰がどのような取り組みを担うのか、責任者とメンバーの体制案を作成することもステップの一つです。

そして、これらのプロセスを経た上で「やはりシステムでの解決が必要だ」という結論に至った際に、初めてシステムの構想を立てていきます。

もし弊社がこのステップをご支援させていただく場合、SaaS型SCMシステム「PlanNEL」を活用します。

お客様の実際のデータをPlanNELに入れていただくことで、システム導入後にどのような業務フローになるのかを具体的に見ていただくことが可能です。実際のシステム画面を操作しながら業務イメージを持ち、「本当にこれで自分たちの仕事が回るのか」「有用なシステムなのか」を検証していただく場となります。また、その際には他社様の導入事例なども合わせてご紹介しております。

ワークショップの目的-スケジュール

スケジュールの目安としては、大体3ヶ月間で6回程度、1回あたり3〜4時間の枠を取っていただき、関係者の皆様にお集まりいただくワークショップを実施します。お客様側には、参加メンバーに加えて推進役となるリーダーやコーディネーターの方を立てていただく必要はありますが、特に「課題整理」において非常に重要な場となります。

ワークショップの意義-ワンストッププロセス実現のための協働体制づくり

また、こうしたワークショップを行うことで、副次的な効果も生まれます。これを「組織開発」と呼ぶこともありますが、部門を超えて「共通の課題に一緒に取り組もう」という前向きなマインドシフトが起こるのです。結果として、部門間の壁を越えて協力し合える新たな人間関係が構築されるという、非常に大きなメリットがあります。

トップダウンで「上から指示されたからやる」のではなく、ワークショップを通じて「みんなで協力して取り組まなければならない」という前向きな空気が醸成されます。

これはSCMの仕組み構築に限った話ではありません。私が過去に生産管理システムのプロジェクトに携わった際にも、工場の方々だけでなく、調達部門や営業部門の方々にもご参加いただきました。さらに、その取り組みが自社のキャッシュフローや財務にどのような影響を与えるのかという視点も非常に重要になるため、財務部門の方の関与も必要になってきます。

ワークショップの意義-チームメンバーのマインドシフト

このようにさまざまな部門を巻き込んで進めることで、「当初は各部門が部分最適な積み上げ型で業務を行っていたが、会社全体を良くするためにはどうすべきか」という視点への大きなマインドシフトが起きるのです。

もし、皆様の会社の中で「SCMについて社内に理解者がいない」「現場でとても困っているのに経営層が理解してくれない」「部署間で考え方が異なり、業務がうまくいかず現場が大変な思いをしている」といったお悩みがございましたら、本日ご提案した「ワークショップ」をぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。ご興味がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

本日のセミナーは以上となりますが、もし追加でご質問やご興味がございましたら、いつでもお問い合わせください。

また、弊社では、SCMセミナーを月1回程度の頻度で開催しておりますので、ぜひまたご参加いただけたらと思います(セミナーの一覧はこちらから確認できます)。本日は誠にありがとうございました。

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