ABC分析

ABC分析を行なうことによって、企業は売上への貢献度が高い製品、低い製品を管理できるようになり、効率的な在庫管理が可能になります。

今回はABC分析の基礎や注意点をご紹介します。

ABC分析とは

ABC分析とは、製品の売上高・販売数・出荷数・在庫数などの指標から評価軸を選び、ABCの3段階で分類し、管理する方法です。図1は売上高を指標としてABC分析を行った表です。売上の構成比率の上位を占める製品は、製品全体の中では少数であることがわかります。

図1.売上高を軸としたABC分析

売上高を軸としたABC分析

パレートの法則

パレートの法則とは、「富の80%は人口の20%が所有している」「売上高の80%は20%の顧客によって生み出されている」「売上高の80%は20%の製品によって生み出されている」というように、結果の80%は原因の20%によって作られるという考え方です。こういった特徴から、パレートの法則は「80:20の法則」や「ばらつきの法則」とも呼ばれます。

ABC分析はパレートの法則に従い、大きなリターンを得るために最も重要な製品に焦点を当てるという考え方です。在庫管理では、Aランクにあたる最も重要な製品の在庫を多く持ち欠品に備え、Cランクにあたる重要ではない製品の在庫は多く持たずにある程度の欠品を許容するということになります。したがって、A,B,Cそれぞれのランクの製品に対して、どのようなサービスレベル(欠品許容率)を設定するかをセットで考える必要があります。

ABC分析の例 パレート図

ある製品群に対して、売上高を指標としてABC分析を行いパレート図にしました。(図2)

図2.売上高からABC分析を行なったパレート図

.売上高からABC分析を行なったパレート図

パレート図からは次のようなことがわかります。

  • Aクラス:売上構成比率の40%を占める製品は全体の製品のうち5%
  • Bクラス:売上構成比率の40%を占める製品は全体の製品のうち15%
  • Cクラス:売上構成比率の20%を占める製品は全体の製品のうち80%

つまり、売上構成比率の80%を占める製品は全体の20%(=A+Bクラス)であり、売上構成比率の20%を占める製品は全体の80%(=Cクラス)でした。

自社製品をABC分析することで、どの製品を重点的に管理しなければならないか、または管理を緩めても良いかが分かります。ただしABC分析にはいくつか注意点があります。

ABC分析の注意点

ABC分析は管理対象を見分けるために非常に有効ですが、需要が変動するということを加味していません。例えば、次のような落とし穴にはまるケースがよくあります。

  • Aクラスの製品は売上の大部分を占めるため、販売の機会損失をしないように在庫を大量に持っておく必要がある
  • しかし、Aクラスの製品の販売推移は非常に安定的であるため、在庫を多く持ってしまった結果、過剰在庫となった

つまり、単純にABC分析をしただけでは、それぞれの製品にどれくらいの在庫を持たせておけば良いか、どれくらいのリソースを割けば良いかは判断できません

需要のバラツキ

需要が季節性に大きく左右される製品は期間を区切ってデータを集計し、分析する必要があります。例えば、扇子とストーブを対象として、ABC分析を夏と冬にそれぞれで行った場合の結果は大きく異なるでしょう。

プロモーション・新商品

プロモーションを積極的に行っている製品や新商品は、現時点での売上構成比率は少ないが、今後大きく伸びる可能性があるため、ABC分析の対象から外して考えるほうが良いでしょう。

在庫管理に活かすには

ABC分析は管理すべき製品の優先順位を把握するために非常に有効な手法です。しかし、すべての製品に対して一律にABC分析は有効ではありません。季節性などの需要の変動を加味しなければ過剰在庫となり逆効果になる恐れがあります。海外では需要の変動性をXYZとして、ABC分析と掛け合わせることで、ABC XYZ分析という手法が用いられています。ABCが製品の重要度を表すのに対して、XYZは需要の変動性、バラツキを表します。(図3)

図3.ABC XYZ分析

ABC XYZ分析

図3の左上に位置しているものほど重要度が高く需要が安定しており、右下に位置しているものほど重要度が低く需要が不安定になります。ABC XYZ分析結果に応じて、個別に在庫管理を行うことで過剰在庫を防ぐことができます。

例)

  • AX、BX:需要が非常に安定しているため過剰に在庫を持たない
  • BZ、CZ:重要度が低くバラツキも大きいため、受注生産や欠品してから発注する

まとめ

ABC分析は売上高以外のさまざまな指標で分析することができます。現状を分析することで限られたリソースをどのように活用するかの判断材料になるでしょう。需要のバラツキを表すXYZと併せて活用することで効率よく在庫削減や利益率向上につなげることができます。

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