自社の課題に合ったSCMシステムの選び方|SCMセミナーレポート
2026年9月2日、ザイオネックス株式会社は「SCMシステム導入で失敗しないための『最適解』~自社の課題に合ったSCMシステムの選び方~」と題したオンラインセミナーを開催しました。
SCMに関わる領域は幅広く、対象となる業務や意思決定の時間軸もさまざまです。そのため、それらの業務を仕組み化しようとすると、製品名や機能だけで比較すると、自社の課題に適したシステムを選べないことがあります。
本セミナーでは、代表取締役の藤原玲子がSCM業務と関連システムの全体像を整理し、PSI管理、需給連携、在庫配置などの課題を例に、システム選定の考え方を解説しました。本記事では、その内容を紹介します。
目次
なぜSCMシステム選びは難しいのか
弊社には、「現在の課題に対してPlanNELのようなシステムを導入すると何が良くなるのですか?」といった疑問や、「大規模なSCMシステムを導入したものの、うまくいっていない」といったご相談をいただくことがあります。今回はそうした背景を踏まえ、私たちが考える「自社の課題に合ったSCMシステムの選び方」をテーマにお話しいたします。

まず、「なぜSCMのシステム選びは難しいのか」という点についてです。
こちらは、書籍「基礎から学べる! 世界標準のSCM教本」に掲載されているSCMの世界観を表現する図の一つです。ここでお伝えしたいのは、SCMは「地球規模のテーマ」であり、非常に範囲が広いということです。
地球規模の問題から始まり、国家間の政治・経済の対立、さらには企業間の問題が存在します。

そして企業の取引に目を向けますと、SCMを説明する上で「モノの流れ」と「お金の流れ」がよく言及されます。
企業間の取引において、お互いがどれだけ注文をするのか、現在どれだけ在庫を抱えているのか、エンドユーザーが将来どれだけ購入するのかといった要素はすべて関係し合っています。そのため、メーカーだけなど、どこか一箇所だけがうまく機能してもサプライチェーン全体が良くなるわけではありません。
よく議論されるテーマとして、メーカーとサプライヤー間の取り組みを指す「CPFR(Collaborative Planning, Forecasting and Replenishment)」という言葉があります。これは、お互いの将来の需要や、サプライヤーの供給能力などを共有し、コラボレーションする考え方です。こうしたアプローチも重要ですが、メーカーとサプライヤーの関係は1対1ではないため、難しい問題を含んでいます。
そうした複雑な背景を考慮すると、やはり「企業内」が最もコントロール可能な領域であり、自社で何とかできる部分になります。

弊社では、SCM業務を説明する際、「三層構造」の図を用いて説明しています。
まずは一番下の層に「実行」の業務があります。これは、過去のデータやこれから実行するためのデータを管理したりする部分で、一般的には基幹システムやERPでカバーしている領域です。
こうした実行の前に計画を立てるプロセスがあります。「戦術」にあたる部分です。通常の企業であれば、1年間の予算などを立て、それに向けてどれだけ売っていくのか、どれだけ供給するのかを四半期ごと、月ごと、場合によっては週ごとに見直し、再計画します。ところが、この部分に会社として共通のシステムがなく、個人の頑張りに依存してしまっているケースを非常によく見かけます。
さらに一番上の「戦略」の部分です。図に記載している実績レビューや需要確認といったものは一つの例にすぎませんが、実際に会社をどのようにしていくのかという「意思決定」を下すための情報管理にあたります。
このように戦略・戦術・実行といった枠組みで考えることが、SCMの領域を理解する上で非常に分かりやすいと考えています。

次に、SCMにおける課題やテーマを全体的にあげてみました。
- Design:どのようなサプライチェーン、つまりどのような供給ネットワークにするか
- Plan:需要や需給、在庫、生産計画など、将来に向けて、何を・どれだけ・どこで準備するのか。なかでも、計画はSCMの中心となる領域です
- Source:誰から、どのように調達するのか
- Make:何を・いつ・どの設備で作るのか
- Deliver:商品をどう保管し、顧客までどう届けるか
こうしたテーマに加えて、最近は「Sense & Response」としてあげている、可視化やリスクレジリエンスも重要視されています。特にリスクレジリエンスに関しては、ホルムズ海峡情勢の影響や各種災害など、さまざまなことが起きています。「いま何が起きているのか」「今後、何が起きそうか」を捉え、どう対応するか。ここも非常に重要になります。そして、最後の「Enable」という部分は、データやAI、サステナビリティなど、SCM全体を支える共通基盤のことを指します。
先ほどのテーマの分類に照らし合わせて、もう少し細分化してみました。サプライチェーン戦略や設計などに対して、自社の課題・それに関連するシステムとしてどのようなものがあるかを表にまとめました。

こうして見てみると、「サプライチェーンの戦略・設計」というと、企業の中では非常に大きなテーマです。しかし一方で、倉庫の管理・輸配送となると、非常に細かいテーマになります。つまり、現場レベルから経営レベルまで非常に幅広い分野にまたがっており、管理レベルの大きさが全く違います。また、対象となる範囲も工場だけでなく、販売や調達など多岐にわたるため、業務の粒度もさまざまです。
このような中でSCMを考える上では、ここであげたテーマのうち「自社にとって、どの部分が一番の課題なのか、経営にインパクトがあるのか」を見極めることが、重要なポイントになります。
SCM業務と関連システムの全体像

「SCMシステムをどう選べばいいのか」を考えるにあたり、まずは自社の課題から問いかけをしてみるのが良いと思います。今の自社において、どの領域に問題があるのか。そして、「何を判断できるようにしたら、それが改善できるのか」を考えるということです。
課題から問いかけをしていくと、現場の方の意思決定だけでは済まないこともあります。
例えば「工場の能力が足りない」となった場合、生産ラインを増設するのか、あるいはもう一つ工場を建てるのかといった、戦略的な意思決定が必要になるケースもあります。当然、その意思決定にかかる時間軸もさまざまなため、データを活用して十分に分析する必要があります。
この分析をする際に「どんなデータを使って、どのようなデータがシステムからアウトプットされるのか」ということが非常に重要です。大事なのは、アウトプットから考えることだと思います。まずは「何が欲しいのか」を考えた上で、それにはどんなデータが必要になるのか。インプットとなるデータが自社に揃っているのかということも考えてみる必要があるでしょう。
そして次のステップとして、その課題解決を支援する「システムやカテゴリーを特定する」ことが重要になります。最近ではAIもありますし、システムをリサーチする際には、まず機能や領域をキーワードとして検索し、「そのシステムで何ができるのか」という探し方をされると思います。
しかし、いきなりシステム探しに行き着くというよりは、先ほどお伝えした「自社の課題、判断したい業務、意思決定の時間軸、インプットとアウトプット」をしっかりと整理した上で、「システムの特定」のステップに進んでいただくと、より効果的にリサーチができると考えています。
ここで、企業の経営者の方に認識していただきたいことがあります。システムを導入するとなると、「システムの専門の人に任せればいい」「IT部門を中心にして進めればいい」と思われることがあるかもしれません。しかし、SCMにおいては、「経営課題そのもの」であることを認識していただき、自社のどの業務に課題があるのかを、必ず問い直してみてください。

次に、SCMに関わるシステムにはどのようなものがあるのか全体像を整理しました。
スライドの色分けは、業務領域ごとに同じテーマのものを同色で表現しています。業務領域と、そこでの意思決定、関連する時間軸、そしてシステムのカテゴリーですね。さらに、システムのリサーチにおいて重要な、インプットとアウトプットも記載しています。
項目が非常にたくさんありますので、少し分類し、まずは「戦略・マネジメント系」だけを抽出して載せてみました。このような形になっています。

「戦略・マネジメント系」の業務領域において「自社が何をやりたいのか」が特定できたら、これらのキーワード(水色文字)を活用しつつ、各ベンダーに対して「それを実現するにはどんなインプットが必要で、何がアウトプットされるのですか?」といった質問をしてみるとよいと思います。

次は「オペレーション計画系」です。企業の中では、おそらくここが一番テーマになることが多い分野だと思いますが、需要予測から納期回答、補充計画といったところまでをあげています。この部分は、一般的に「統合型SCP(サプライチェーンプランニング)」と呼ばれるシステムがカバーする領域です。弊社が提供するSCMシステム「PlanNEL」でもカバーしている領域となります。

続いて「実行系」です。こちらには生産計画なども含まれていますが、こうした計画にあたる部分でも、足元の業務に必要なものは、ここでは実行系に分類しています。さまざまな実行系の業務にあたる部分についても、キーワードをあげています。

SCMシステムを選ぶときの3つの視点
さて、ここまでの内容を踏まえ、自社に合ったSCMシステムを選定するにあたって重要なことをお伝えします。
まず1つ目は、自社がどの領域に取り組むのかを明確にし、「その領域が得意なソフトウェアをリサーチしましょう」ということです。
また、私が本当に大事だと思っているのは、「そのソフトウェアが、どんな思想や、どんな課題解決をルーツに作られたものなのか」をリサーチすることです。海外の製品は企業買収によって統合されたシステムも多いため、この「思想」や「課題解決のルーツ」がぼやけてしまっている場合があります。それでも、製造業のお客様の課題解決をルーツに作られたものであれば当然製造業に強いですし、当初は流通の問題を解決するために作られたものであれば流通に強いといった特徴があります。
このように、対象となる業務領域の得意・不得意だけでなく、そのソフトウェアが持つ「思想」も、選定する上では非常に大事な要素になります。ご自身でリサーチする時はもちろん、ソフトウェアの販売会社とお話をされる際にも、「このソフトウェアはどのような背景で開発されたのですか?」「元々はどのような企業の課題に向けて作られたものなのですか?」と尋ねてみるのは、とても良いことだと思います。
次に2つ目のポイントです。自社に合ったSCMシステムを選定するにあたって、まずは「目の前で困っていること」、ここに一番フォーカスされるとは思います。ですが、目の前の課題解決だけに注力するのではなく、少なくとも5年ほど先までの自社の取り組み(ロードマップ)を描いた上で、どういったソフトウェアを採用するのかを決めることをお勧めします。目の前で困っていることだけを解決するシステムを選んでしまうと、後々システムが「継ぎはぎ」になってしまう可能性があるからです。
そして3つ目のポイントとして、領域によっては「1つのベンダーのソフトウェアだけで全てカバーできるとは限らない」ことがあります。その場合は、他システムと連携できるソフトウェアなのかどうか、例えばAPIが用意されているかなど、機能面や非機能面での拡張が可能かということも確認しておく必要があると思います。
課題例1:ExcelによるPSI管理から脱却したい
ここからは、実際の課題例をあげながら、「こういう場合は、こういった選定の仕方が良いのではないか」ということをお話ししていきたいと思います。

課題例の1つ目ですが、よくあるのが「ExcelでPSI管理(生・販・在の計画管理)をしている」というケースです。ExcelでPSI管理をすること自体が必ずしも悪いわけではないのですが、個別に管理していると属人化してしまうことも多く、データの共有も難しくなります。そのため、データをシステムで共有し、将来的には「S&OP(Sales and Operations Planning)」に発展させたいとおっしゃる企業様が非常に多いです。
現在の実現したいことにフォーカスすると、「まずはExcelをやめたい」ということになると思います。「何を・いつ・どれだけ供給するか」、ここができれば今は大丈夫、ということになるかもしれません。そうしますと、SCPシステムの中でも、PSIや在庫、需要・供給のデータ共有ができればそれでよい、という話になります。
でも将来的に、S&OP会議を通じて「経営レベルで需給管理をしたい」「需給の意思決定をしたい」ということになると、モノの動きだけでなく、お金の管理も必要になってきます。それに加えて、将来の会社のリソース(工場や人員など)も最適化していく必要があります。そうなると、管理対象となるのは需要や供給、在庫といった要素だけでなく、売上や利益、生産能力といった要素がプラスされます。また、検討する時間軸も、日々のオペレーションではなく、より中長期的なスパンになりますね。
そして、システムを利用する方もオペレーションの担当者だけではなく、財務や経営層も含まれてきて、さまざまなシナリオの中から「会社としてどの需要・供給シナリオを選択するか」という部分が、意思決定の要になってきます。
そうなりますと、単にPSIの管理ができればよいわけではなく、「こういった場合はどうしたらいいのか?」という「What-ifシミュレーション」などのシナリオ分析ができたり、財務の情報と連携したりして、「それが自社の設定しているKPIにとって良いことなのかどうか」を判断できるような機能が必要になってきます。

こうした例におけるシステム選定の考え方ですが、単に「Excelをどのシステムに置き換えるか」ではなく、「将来、どのような意思決定をしたいのか」というところから逆算することが重要になってきます。
現在の要件が「Excelで作っているPSI表をWeb化したい」「データベース化したい」ということであれば、BIツールやローコードツールでもできるという話になります。しかし、「それが将来的にS&OPまで発展可能なのか」ということは、少し考えてみる必要があります。つまり、最初は「ExcelでのPSI管理をやめたい」という要件があったとしても、そこだけを要件にしないということが重要です。
では、「改善したい業務は何なのか?」と考えたときに、「PSIを組織で共有し、一元的に管理したい」「さらに、計画変更時に需給への影響を確認したい」ということがあげられます。そうなりますと、単なる情報共有や集計だけではなく、SCPシステムの領域になってきます。
そして最後に、「将来実現したい意思決定は何なのか?」ということをきちっと考えてみます。目の前のことだけでなく、将来の工場の能力や、在庫が増加した時はどうすればいいのかといった、さまざまなシナリオを比較し、売上や利益も含めた経営判断が必要になります。そうなると、やはりSCPからIBPへと発展していくことになりますので、そうした「将来の発展に対応できるアーキテクチャ」を持ったシステムを選ぶということが重要になります。

次に、段階的な進め方の例をあげています。
フェーズ1:PSIの標準化
まずは、Excelを共通データ化・共通プロセス化し、PSIを標準化する段階です。ここだけであれば、Excelで頑張ってマクロを組んだり、共有基盤を作ったりすることで対応できる部分もあるかもしれません。
フェーズ2:プランニングの高度化
次のステップに進むと、さまざまな「制約」が関わってきます。制約とは、例えば工場のカレンダーや工場の生産能力、輸送能力などのことです。これらが関係してくると、さすがにExcelだけで処理することは難しいため、一般的にはSCPのような、シミュレーションができるシステムが必要になってきます。
フェーズ3:部門間の統合とシナリオ比較
さらに、営業部門・SCM部門・生産部門などを統合していくとなると、シナリオごとの比較シミュレーションが必要になります。例えば「もし需要が1.5倍になった場合、工場はどのくらい稼働を上げなければならないのか」といったシナリオを作成し、比較検討するということです。
最近よくある例で言えば、為替の変動ですね。輸出入で部品や原材料を調達している企業では、為替の変動が利益に大きく影響します。「1ドル160円の場合」と「1ドル165円の場合」とでは会社の利益がかなり変わってくることもありますので、そうした為替変動も一つのシナリオとしてシミュレーションし、比較検討することが必要になってくると思います。
フェーズ4:財務計画との統合
次は数量だけでなく財務などの情報とも統合していくことになります。IRとして株主の皆様に発表している売上予算等を本当に達成できるのかといったことも、SCMのシナリオとして計算できるようになると非常に良いと思います。
このようにフェーズ1からフェーズ4までのステップを踏んで、段階的にどんどん拡張していけるアーキテクチャであることが望ましいと考えています。
その際のアプローチとして、「良くないシステムの選び方」と「良い選び方」を少し比較してみたいと思います。

出発点としては「Excelでの業務をなくしたい」ということだったとしても、「単にExcelをなくす」という視点ではなく、「PSI業務を標準化したい」という考え方でスタートした方が良いですね。ただ、その時に「とにかくExcelに似たものを探そう」としてしまう、これに陥りがちなのですが、それでは今までの業務の「踏襲」になってしまいます。「必要な意思決定ができるシステムになるのか」という視点から考えなければなりません。
またシステム選びにおいて、「自分たちでメンテナンスしたいから、ローコード開発ツールが良い」というお声もよく聞きます。もちろんそれでも良いのですが、自社でローコード開発を行う手間や時間を考えた時に、本当にコストに見合うのかという視点も必要です。開発や維持にかかる人件費も含めて、費用対効果を検討する必要があります。そうした点も考慮した上で、やはり最初から「拡張可能な基盤を選ぶ」のが得策ではないかと思います。
一番重要なのは、現在の業務をそのままシステム化しようとするのではなく、段階的に業務を変え、プロセスを「高度化」することを目指すのが、良いシステムの選び方だと考えています。
課題例2:需要計画と生産・調達計画を連携したい
続いて、課題例の2つ目です。

このケースは、「需要計画と生産・調達計画が連携しておらず、欠品や過剰在庫が発生している」という課題です。これは非常に機会損失の大きい話ですね。売れるものが欠品して売れず、逆に売れないものが過剰在庫として残っているという状況です。
これを解決するには、単にシステム化すればいいというものではなく、やはり「販売側の需要と、供給側の制約がしっかり繋がる」ということが本質的な課題になります。
現状はどのようになっているかというと、営業部門は「売りたい計画」を作ります。一方の生産部門は、営業の計画をあまり信用しておらず、自分たちの過去の経験に基づいた独自の生産計画を立てているケースが多いです。そして調達部門は、その生産計画を受けて部品の発注計画を立てる……。これでは、各部門がそれぞれバラバラの計画で動いており、全く連携できていないことになります。
その結果として、欠品と過剰在庫が同時に発生してしまうのです。
そこで、何を改善したいのか、どうしたいのかということを、図にまとめています。表面的な問題や課題を見るだけでなく、きちんと原因を特定し、「販売計画を起点として、生産・調達・在庫を連動させる」ということが非常に大事になってきます。
日本の製造業のお客様は「これまでは製造さえしっかりしていれば売れてきたから」という背景があるからでしょうか、これまで「工場の生産計画」という部分に非常に力を入れて改善されてきました。
ただ、「本当に工場の生産計画だけでいいのか?」という話があります。やはり大事なのは、「これから何が、どれだけ売れるのか」という「需要」です。これがすべての起点になります。「デマンドドリブン」と言ったりもしますが、どれだけ売れるのかという需要をきちんと起点にしないと、モノを作ってはいけない、というのが本来は一番重要なのです。
作り方や生産計画ばかりを一生懸命に立てても、将来どれだけ売れるのかという予測がなければ、将来どれだけ生産したらいいのか、調達したらいいのかが分かりません。ここは非常に重要な問題だと思います。そうしますと、この「需要」に対して「いつ・どこで・どれだけ生産するべきか」ということが、重要な意思決定になってきます。
そのためのインプットやアウトプットはさまざまありますが、ここに適用できるソフトウェアのカテゴリーとなると、やはり「SCPシステム」になります。
私が「需要が一番大事だ」とお伝えしたため、「需要予測のシステムだけがあればいいのではないか?」「予測さえあれば、あとは現場が良きに計らってくれるから大丈夫」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、本当にそれでよいのでしょうか。
それを考える上で、「需給連携の仕組みの基本形」として、このような図を描いてみました。

需要に対してどう供給するかを繋げて、システムや仕組みとして考えた時、まず「需要予測」があり、将来どれだけ売れそうかという「Demand Plan」があります。
次にいきなり「Supply Plan」に進むわけではなく、「需給のバランス」を調整するステップが入ります。今どれだけ在庫があるのか、今後どれだけ在庫を持っておくべきなのか。また、発注残がどれだけあるのか、入荷予定がどれくらいあるのかといった情報です。
さらに、その時の「調達リードタイム」はどのくらいなのか、工場で作る場合は「生産能力」が十分にあるのか。生産する上で、設備や工場の能力を把握するだけでなく、部品の発注をするためには「その製品を作るための構成」が必要になりますので、BOMの情報も必要になってきます。
そして、生産のリードタイム。図にあげているのは主なものだけであり、実際にはこの需給バランスを取る上で、計算に必要な要素や制約が他にも色々とあります。これらの制約を考慮した上で、Supply Planを立てるということになります。Supply Planのアウトプットとしては、生産計画もあれば、調達計画や在庫計画もあります。したがって、SCPを考える上では、この「全体感」、つまりデータがきちんと繋がって計算やシミュレーションができるということが必要になってきます。

このようなケースをシステム化する場合、単に「生・販で同じ数字を見るだけ」では不十分です。
「BIがあれば情報共有ができるから十分ではないか」と思っていらっしゃる方もいると思いますし、BIツールの機能に加えて、軸を変えて評価や分析ができるようなツールも出てきているため、「そうしたツールでも大丈夫なのではないか」と思われる方もいると思います。
しかし、システムとしては、「販売計画を変更したら、将来の在庫・生産・調達にどのような影響があるのか」を、きちんと計算できる仕組みが必要になります。
システム選定にあたって確認すべきこととして、システムができることをあげています。例えば、「Demand Planningができますよ」と謳っているソフトウェアであれば、実際に需要予測ができるのか、需要計画も一元管理できるか、といった確認が必要になってきます。
これ以外にも、例えば「各販社の需要計画を集計できますか」「トップダウンで決まった予算を分配して、各販社の需要計画を作れますか」といった要件もあるかもしれません。
それ以外にも、Supply PlanningやInventory Planningなど、ソフトウェアの機能説明を見るといろいろ出ていると思います。その時に、「自分たちがやりたいことに対して、対応できるのか」を確認することが必要ですね。
もう一つは「シナリオプランニング」です。これは先ほどからお話ししている「What-ifシミュレーション」のことですね。例えば、需要計画を変更した際の影響を比較できるか。売上が1.5倍になった場合、3倍になった場合、もしくは半分になった場合、それぞれの影響を比較するようなシミュレーションができるか、といったお話です。
あとはデータの共有・一元化をする「コラボレーション」ですね。このように、ソフトウェアの機能と自社の要件をチェックしてみられると良いのではないかと思います。

次に「生販連携」についてです。生販連携のシステム化では、企業によって「生販連携の必要範囲」が異なることがあります。
例えばケースAでは、「需要予測がそもそも難しく、販売計画の精度が低いことが、欠品や過剰在庫の原因になっている」とします。「それなら販売計画をしっかり立てればいいのではないか」と思われるかもしれませんが、やはりBtoBのビジネスでは需要予測が効きにくかったり、市況の影響で将来の需要が大きく変動したりすることもよくあります。
そのため、Demand Planningだけでなく、Supply Planningも重視する必要があります。要するに、需給の「バランスを取る」という部分に注力することが重要なのです。
続いてケースBとして、「需要は分かっているが、供給の調整ができない」という場合があります。例えば3ヶ月先などの「内示」が来るので需要は把握できているものの、「自社は複数の工場をまたいで生産しており、生産能力の制約が大きいんです」といった場合です。
このような場合は、Supply Planningの部分に注力することが重要です。また、需給のラフカットプランニングのような大きなSupply Planningと、「APS(Advanced Planning and Scheduling)」と呼ばれる生産スケジュールを重視するのが良いでしょう。つまり、精度の高い内示がきちっと来るようなケースに関しては、供給計画の方が重要になります。
そしてケースCとして、「在庫配置が問題になるケース」です。要するに「全社での在庫はたくさんあるのに、必要な場所に必要な商品がない」という状況です。これをよく「横持ち」と言ったりするのですが、倉庫間の移動が非常に多いという問題がある場合ですね。
お客様からよく「システムで横持ちの計画はできますか?」と聞かれるのですが、横持ちというのは元々計画するものではなく、「全体の在庫はあるけれど、必要な場所に必要な商品がない」から起きてしまうものなのです。ですから、「当初から『どこに何を配置するのか』という計画がきちんとできていれば、そもそもあまり横持ちは起きませんよ」と私たちはお答えしています。
要するに、この在庫配置が問題な場合、「どこに、どのくらい在庫を持つのか」が重要になります。倉庫のキャパシティもありますし、よく売れるお客様の近くに配置できているのかどうかといった問題もあります。
例えば、中央倉庫があって地方倉庫が複数あるようなケースや、西と東に1つずつ大きな拠点倉庫があり、さらにその下に細かな倉庫があるといった場合ですね。そうした時は多段階で在庫が動くことになりますので、「どの拠点に、どの商品を、どれだけ在庫として持つべきか」を全体で考える必要があります。この在庫配置の問題を解決するには、Inventory Planning と合わせてMEIO(多段階在庫最適化)ができるソフトウェアかどうかも、きちんと考えた上で選ぶことが必要になってきます。

そして、「シナリオ」に関係するお話ですが、経営として「どの計画を採用するか」を決めるためには、やはり複数シナリオによるシミュレーション結果の比較が必要になります。例えば、「需要が20%増える」という状況になった場合を考えてみましょう。
シナリオAとして、「残業して増産する」という選択ができます。この場合、売上は確保できますが、製造コストが増加してしまいます。
シナリオBとしては、「製造能力が足りないので外注する」という選択です。能力不足の問題は解消しますが、おそらく利益率は低下してしまうでしょう。
そしてシナリオCとして、「一部の顧客への供給を制限する」という選択です。「申し訳ありませんが、出荷が遅れます」とお伝えするわけですが、この場合は利益率は維持できるものの、売上機会の損失につながりますよね。
このようにさまざまなシナリオが考えられます。これらのケースをそれぞれシミュレーションし、自社のKPIに照らし合わせて「最も良い」と判断できる計画を採用するというプロセスが重要になるのです。
こうした複数シナリオをシミュレーションできるSCPシステムを使えば、全体の「KPIサマリー」といったレポートが出力されます。シナリオA、B、Cそれぞれの場合において、一つの製品や一社の顧客単位だけでなく、「全体としての利益はどうなるのか」「全体としての工場の稼働率はどうなるのか」といった分析結果が提示されます。
それを見た上で、「では、どの計画を実際に活用するのか」を意思決定することが必要になります。
SCMシステム選定の5つのステップ

最後になりますが、SCMシステムの選び方のまとめです。
これは繰り返しになりますが、「起きている現象からシステムを選ぶ」のではなく、「どんな意思決定を変える必要があるのか」という視点からシステムを選ぶのが良い選び方です。
そのためには、1から5のステップを順番に踏んでシステムの選定を進めていただくのが良いと思います。
まず、「現状課題の特定」についてですが、実はここが組織内で合意できていないケースが多いのです。「この人はこう言っているけれど、別の人は違う課題をあげている」というようなこともよくあります。ですから、まずは「自社の課題はこれだよね」ということを組織全体で合意することが必要だと思います。
その上で、「将来どうしていくのか」というありたい姿に向かって段階的に実現していく。そして、その各段階で「システムにどんなことが必要なのか」を考え、選択すべきシステムカテゴリーを特定する。その上で最後に、この資料であげたようなキーワードを使ってソフトウェアをリサーチし、各ベンダーに質問してみる、という進め方が良いのではないかと思います。
SCMシステム選定で確認すべき3つのポイント
総括として、システム選定において確認すべき「3つの重要なポイント」をあげておきます。
1. SCMシステムの導入自体を目的にしない
システムを導入するということは、最終的に「会社のオペレーション競争力を高めること」が目的です。ですから、システム部門だけ、あるいは現場部門だけの検討事項ではありません。これは経営課題なのだということを、経営層の方々にもしっかりと理解していただきたいと思います。
2.費用対効果に見合わない過剰な投資をしない
これ結構重要だと思うのですが、体力のある企業様ですと、自社が得られる効果以上の過剰な投資をしてしまうケースがあるようです。「SCPのソフトウェアは高価だ」というのが定説のようになっていたりして、「有名なシステムなら、これだけ投資してもいいんじゃないか」と思ってしまうケースもあるかと思います。しかし、「本当にその投資額が自分たちの得られる効果に合っているのか」というところは、一度立ち止まって考えてみる必要があると思います。
3.小さく始めて段階的に導入する
当初から大規模なシステムを一括導入するのではなく、「小さく始めて、ステップを踏んで導入を拡張していけるか」。この拡張性を持ったシステムかどうかも、確認することが重要だと思います。
弊社が提供しているSCMシステム「PlanNEL」でも、このようなステップを踏んで導入を進めていくことはできます。SCMに関連することで、お困りごとがございましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。